タロット
吉川 「実は前から興味あったんですよね。タロットって」
占術師 「さようですか」
吉川 「色々なものにモチーフとして出てくるじゃないですか。ジョジョとか」
占術師 「確かにそうですが、実際それほど単純なものではありません。長い歴史によって練られてきた卜占の集大成というべきものなのです」
吉川 「あ、これ知ってます! 吊られた男。なんか忍耐とか我慢とかの意味があるんですよね」
占術師 「はぁ。そうも言われてますね。しかしそれほど単純なものではありません。ここに現れるタイミングなども重要なのです」
吉川 「あと位置が、正位置とか逆位置とかもあるんですよね?」
占術師 「え? あのですね、そう聞きかじった知識で読み解こうとするのが一番良くない! いいですか? タロットには宇宙があるのです。その複雑に絡んだ糸を解きほぐすように丁寧に解釈をしなければいけません」
吉川 「あ、これも知ってる! 愚者。トランプのジョーカーの元となったとも言われてるんですよね? これはどういう意味なんですか?」
占術師 「意味? 意味ってどういうことですか?」
吉川 「ここに愚者が出たということはどういうことでしょうか」
占術師 「そうですね、大変なことです。私もタロットを長くやってますが、ここまで大変な目が出るのは久しぶりです」
吉川 「え? そうなんですか? 具体的には?」
占術師 「とにかく大変ということです。なにかが起こるかもしれません。ひょっとしたら何も起こらないかもしれない。そのくら大変なことです」
吉川 「いや、全然具体的じゃないんですけど」
占術師 「あーっ! ここでこのカードが出ちゃったかぁ」
吉川 「これは?」
占術師 「これは、見ての通りおじいちゃんです」
吉川 「ハーミットって書いてありますね。隠者ですか?」
占術師 「え? あぁ、そういう人もいますね。私の流派ではなるべく小さいお子さんにもわかりやすいように言い換えたりするので」
吉川 「そうですか。これの意味は?」
占術師 「意味? 意味はだから、お年寄りは大事にしましょうということです」
吉川 「そんな道徳みたいなのが出るんですか?」
占術師 「ではあなたはお年寄りは大事にしなくてもいいと言い張るのですか?」
吉川 「そうじゃないですけど、もっと運命的なものかと」
占術師 「おっと、ここでこのカードがでましたか」
吉川 「それは?」
占術師 「ドロー・フォーです」
吉川 「ドロー・フォー? ホイール・オブ・フォーチュン、運命の輪って書いてますけど」
占術師 「え? そうなの? いや、うちの流派ではこれはドロー・フォーです。だから四枚引きます」
吉川 「それUNOじゃないの?」
占術師 「気をつけてください。タロットの最中にケチをつけると死ぬという目が出てます」
吉川 「死ぬの? そんな呪いのタロットみたいなやつなの?」
占術師 「それ以上踏み込まないように。まじヤバイっていう目が出てます」
吉川 「あ、はい。すみません」
占術師 「おやおや、こんなところでこのカードが出るとは。ついてますね」
吉川 「なんですかそれ! タロットなんですか?」
占術師 「これはTポイントカードです」
吉川 「Tポイントカード!? なんでこんなところに?」
占術師 「私の私物です。どっかいっちゃったと思ってたんですが、こんなところにあったとは」
吉川 「ちゃんと管理しろよ! 紛らわしいことするなよ。なんなんだよ」
占術師 「ははぁ~ん、それでこのカードが出たのか。ついてませんね」
吉川 「そうなんですか? なんですかそのカード。ザ・タワー、塔ですか?」
占術師 「そうですね。これはハズレです。なんのポイントも貯められません」
吉川 「ハズレ? そういうのもあるの? すべてのタロットはポイント貯めれないと思うけど」
占術師 「だって悪魔とか死神とか太陽のカードがあるのに、塔ですよ? スケールが小さいじゃないですか。ただの建造物。正直こんなカードが太陽と肩を並べてるなんてガッカリしますね」
吉川 「そういうものなんだ」
占術師 「おやおや、と言ってるそばからこんなカードが」
吉川 「ザ・スター、星ですか? これはどういう?」
占術師 「その前にこれをご覧ください。これは私のユーチューブチャンネルなんですが」
吉川 「あ、ユーチューブもやってるんですね」
占術師 「これに高評価とチャンネル登録をしろという目が出てます」
吉川 「そんな具体的な目が?」
占術師 「しないとヤバイって出てます」
吉川 「ヤバイってなんだよ。全然具体性がないな」
占術師 「お忘れにならないように。ケチをつけると死にますよ?」
吉川 「わかりましたよ。でもなんかもうちょっとハッとするようなことを何も言われてない」
占術師 「そうですか? ですが油断しているとほら!」
吉川 「なんですか? 何も起きてませんよ」
占術師 「ジャケットのポケットをお確かめください」
吉川 「あ! こんなところにカードが! ってこれは手品じゃないの?」
占術師 「続いて人体切断マジックに移ります。ご協力ください」
吉川 「いや、すみません。別にケチつけたわけじゃないんです! ねぇ! 目が怖い! 目が怖いよ!」
暗転
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