宇宙人

宇宙人 「どうも、こんにちは」


吉川  「あ、はい。なんでしょう?」


宇宙人 「あの、実はですね。私宇宙人で、地球のことすごく興味があってついにやってくることができたんで、色々調べてるんです」


吉川  「え? 宇宙人? あなたが?」


宇宙人 「はい」


吉川  「全然見えないけど。普通に人間としか思えないけど」


宇宙人 「本当ですかっ!? うれしー! これ、ちゃんと現地の人に見えるように色々と揃えたんです。本当に地球人みたいですか? なんか変なところとかありません?」


吉川  「本当に。普通に人間にしか見えない。宇宙人的な要素なにもないね」


宇宙人 「やったー! かなり調べたんですよ。すごい大変でした。特に苦労したのが陰茎の部分で、かなりこだわったんですよ。私たちのところじゃ考えられないフォルムだったから」


吉川  「いや、見せないでいいよ!」


宇宙人 「でもすっごい細部まで拘ってやったんですよ?」


吉川  「見せないでいいです。普通の地球人は他人に陰茎を見せない。地球のルールとして。そういうあたり宇宙人っぽいな」


宇宙人 「そうなんですね。勉強になります。他に色々話聞いていいですか?」


吉川  「まぁいいですけど」


宇宙人 「地球の名物としてこれだけは食べておけみたいのあります?」


吉川  「広いな。地球の? 地球の名物という単位で考えたことないんだけど」


宇宙人 「そうなんですか? え、あなたは地球の方ですよね?」


吉川  「地球の方ですけど。大きく括っても国っていう感じで、地球全体に帰属意識をもって生きてないですね」


宇宙人 「そうなんですか。ちょっと残念です。せっかく地球にいるのに」


吉川  「なんかすみませんね」


宇宙人 「あとちょっと厚かましいお願いなんですけど、本物のナマステ見せてもらっていいですか?」


吉川  「ナマステ?」


宇宙人 「私たち地球を好きな者たちの間で地球の挨拶として流行ってるんですけど、是非本場のを見たいなと思って」


吉川  「あー、それも言わないですね」


宇宙人 「いいえ? 言いますよ、地球人は。ちゃんと調べてますから」


吉川  「そうじゃなくて、なんていうか。言う地域もあるんですけど、ボクのところじゃナマステって言わないんで」


宇宙人 「え? 地球じゃないの?」


吉川  「地球全体で言ってる言葉じゃないんですよ。ナマステは。結構限られた場所だけで使われてる言葉で」


宇宙人 「あぁ……。そうなんですか」


吉川  「めちゃくちゃガッカリしてますね」


宇宙人 「本当のナマステを一緒にやった動画を友達に見せたかったので」


吉川  「あー、そうなんだ」


宇宙人 「地球に行ったっていうのも嘘だと思われちゃうな」


吉川  「そうかぁ。じゃ、一応やります? 本場ではないですけど」


宇宙人 「いいんですか?」


吉川  「ちゃんとはしてないですよ? 観光地向けのアトラクション的なものだと思ってください。本場ではないけど、それっぽい感じで」


宇宙人 「いいですいいです。それで。偽物の地球人でも」


吉川  「地球人としては本物だからね」


宇宙人 「はい。じゃ、このスマホに向かって」


吉川  「スマホなんだ。こっちに合わせてるんだね」


宇宙人 「いきますよ。せーの!」


吉川  「ナマステ~」


宇宙人 「あー! 本物のナマステだぁ! 感動!」


吉川  「本物じゃないって」


宇宙人 「あ、そうでしたね。偽地球人によるナマステの真似みたいな」


吉川  「偽地球人じゃないんだよ。そこは疑わないでよ」


宇宙人 「でも大丈夫です。これ見たら友達も地球に行ったんだってわかってくれると思います」


吉川  「そういう動画とか見せ合うんだ」


宇宙人 「はい。U Tubeウチューブで」


吉川  「お前、地球人だろ?」



暗転

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