こっちのセリフ
藤村 「『それはこっちのセリフだ』って言いたいからこっちのセリフ言って」
吉川 「とんでもなく雑なオーダーだな。なんだ、こっちって」
藤村 「だから俺のセリフ。俺が普段言いそうなこと」
吉川 「そういうタイミングで言う言葉だっけ?」
藤村 「言いたいんだからしょうがないだろ。俺のことをよく知ってるお前にしか頼めないことだ」
吉川 「う~ん、普段なんて言ってたかなぁ? なんだっけ肩凝った時に言ってたの」
藤村 「カタクリコ?」
吉川 「それそれ『肩こりすぎて片栗粉だよ!』」
藤村 「それもう言ってないよ。筋トレするようになってから肩こらなくなったから。結構前から言ってないよ」
吉川 「あ、そうだった?」
藤村 「いまさら蒸し返されるとは思わなかったよ。それはもうお前のセリフだから。俺は言わないから」
吉川 「別にいらないよ。なんで継承させようとしてるの?」
藤村 「もっとあるだろ、俺のセリフが」
吉川 「『この間you tubeで見たんだけどさぁ』」
藤村 「なになに?」
吉川 「いや、だから。『この間you tubeで見たんだけどさぁ』が言いそうなこと」
藤村 「それは汎用的なセリフじゃん。俺以外の人もよく言うだろ。俺のオリジナルホールドじゃないじゃんか」
吉川 「オーダーが雑なくせに要求が繊細なんだよ。無いよもう」
藤村 「俺の精度が甘いな。こんなに話していてなんでこっちのセリフが言えないんだ」
吉川 「そんなこと言われたってなぁ。『え? これ糖質こんなに低いの? 買うしかないじゃん』」
藤村 「あー、惜しい! それはあっちのセリフだ」
吉川 「どっちだよ。誰なんだあっちは、どこから来たんだ」
藤村 「俺はタンパク質にはこだわるけど糖質は別にそれほど避けてないんだよ。まぁ、低いのと高いのがあったら低い方を選ぶけど」
吉川 「もう無いよ。別にどっちでもいいでしょ」
藤村 「ふざけんなよ。俺だって遊びでやってるわけじゃないんだ。誰のためにやってると思ってんだ」
吉川 「それはこっちのセリフだよ!」
藤村 「言うなよ! そのこっちのセリフはこっちのこっちのセリフだろ? そっちがとるなよ!」
吉川 「別にボクだって言いたいわけじゃないよ。そっちが間違ったことばっかり言ってるからこうなるんでしょ」
藤村 「何だとこの野郎!?」
吉川 「違う! 今のパスだったのに!」
藤村 「うるせぇ。俺のどこが間違ってるっていうんだよ」
吉川 「違うんだよ。こっちのセリフだよって言わせるためのパス。今こそ言っていいんだよ」
藤村 「は? 意味わかんねーこと言うなよ」
吉川 「だから! 『それはこっちのセリフだよ』って言いたいんでしょ?」
藤村 「それは今はどうでもいいだろ!」
吉川 「えー! それをどうでも良くされると、この怒られてる理由もよくわからなくなるんだけど」
藤村 「あん? どういうことだ? 一旦落ち着け」
吉川 「それはこっちのセリフだよ!」
藤村 「なんでそっちがこっちのセリフばっかり言うんだよ! こっちのセリフだよって言いたいのはこっちでそっちがこっちのセリフだって言い出したらこっちはどっちセリフを言えばいいんだよ!」
吉川 「もうなんかよくわからない。やめよう?」
藤村 「……そうだな。急に怒ったりして悪かったな」
吉川 「こっちこそ、ごめん」
藤村 「いやいや、こっちの方こそごめんな」
吉川 「悪かったのはこっちだから。ごめん」
藤村 「そうだな。そっちがごめんだな」
吉川 「なんだと? 表出やがれこの野郎!」
藤村 「はっ!? ……これ今?」
吉川 「うん」
藤村 「これはこっちこセ……。それはこっちのセリフなー!」
吉川 「そこで噛んじゃうかぁ」
暗転
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