サッカー
監督 「今日スタメンの11人は、今までの全日本の中でも最強のメンバーだと信じている。確かに前試合では噛み合わなかった部分があるがまだまだ巻き返せる。言ってみれば2ストライクまで追い込まれただけだ。ここから華麗に逆転ホームランを打ってやろう」
吉川 「はいっ!」
監督 「特にライト」
吉川 「ライトウィングですか?」
監督 「うむ、無尽蔵のスタミナを買っての起用だ。積極的に足を使ってかき回せ。全力投球だ。そしてセンターをフォローしろ」
吉川 「センターバックですね」
監督 「そして球を取る、キ、キャッチャー」
吉川 「キーパー?」
監督 「そう、それ。ベテランを起用した理由はわかるな。守備の要だ。多めにサインを出していけ。シュートとか、カーブとか」
吉川 「カーブ?」
監督 「緊張感を持って当たれ。常に9回裏満塁だと思って」
吉川 「監督、なんかたとえが毎回野球なの気になるっす。野球好きなんすか?」
監督 「野球? 野球ってあの棒でボールを叩くやつ?」
吉川 「とぼけすぎじゃないですか? 野球は知ってるでしょ、今までの流れから」
監督 「いや、野球に関しては全く興味ないな。俺はサッカー一筋だったから。一球入魂で打ち込んできた」
吉川 「サッカーで一球入魂ってあんまり言わないと思いますけど」
監督 「一球だろ? サッカーだって。なにか? お前は何個もボールを使ってサッカーするのか?」
吉川 「そ、そうですけど。サッカー的な言い回しじゃない気が」
監督 「とにかく、常にフィールドの状況に目を配り、チャンスがあれば好球必打でいけ」
吉川 「打はないです。蹴ります。サッカーなんで」
監督 「いちいちなんだ? お前はそうやってその都度アンパイアにケチつけるのか?」
吉川 「アンパイアって言わないすもん……」
監督 「この俺のサッカー愛を疑うわけか? 小さい頃から白球を追いかけ続けたこの俺の」
吉川 「白球じゃないです。サッカーボールは白黒のパンダ柄だから。色のついたのも多いけど」
監督 「白いのは絶対にないと言いきれるのか?」
吉川 「絶対じゃないですけど……」
監督 「野球なんてあんな攻撃と守備が別々になっててメリハリのある競技、まったく面白いと思わないな」
吉川 「言い方の割に褒めてません? 逆にちょっとサッカーディスってません?」
監督 「大の大人が9人も集まって一つの球を追いかけ回すなんて無駄が多いし」
吉川 「サッカー11人す」
監督 「球が小さすぎてどこ行ったかわからなくなるしな。サッカーは持ち運びするのも邪魔なくらい大きいから安心だ」
吉川 「完全に野球の方が好きでしょ」
監督 「そんなわけあるか! サッカー大好きだよ。フットサルみたいで楽しいし」
吉川 「え? フットサルの方先に好きになったの?」
監督 「何だお前は。人のあげ足ばっかり取って。そんなに足を取るとサッカーだったらファールだぞ、なんつってな!」
吉川 「うわぁ、サッカーに愛のないイジり方するなぁ」
監督 「よし。俺のサッカー愛も伝わったところで試合開始だ。野球のことなんて忘れろ! プレイボール」
吉川 「キックオフなんだよ……」
暗転
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます