プロファイフ
藤村 「恐らく30代の男性、身長170cm以下、ヤセ型、あまり外に出ないので色白、コミュニケーション能力に劣り攻撃的な一面を持つ」
吉川 「はー、そこまでわかりますか?」
藤村 「この程度はプロファイリングの初歩ですね」
吉川 「すごいですねー」
藤村 「それほどでもないですよ。まぁ普段はこの知識と技術を活かしてVTuberの特定なんかをしています」
吉川 「割としょうもないことに使ってるんだ……」
藤村 「気になるVTuberがいたら特定しますよ?」
吉川 「いや、別にいいです。なんか気持ち悪いし」
藤村 「おっと、40代女性! 右利き、既婚、子供は二人!」
吉川 「どうしたんですか、突然?」
藤村 「ついこのヤクルトを届けに来た女性をプロファイリングしてしまいました」
吉川 「え? 頼んでもないのに」
藤村 「つい癖になってるんです。あーっと、27歳男性、身長190cm以上、右投げ左打ち!」
吉川 「すごいな。そんなに次々と。誰です?」
藤村 「このサインボールを書いた人物ですね」
吉川 「大谷って書いてあるもん。それはプロファイリングなの? ちなみにそれプリントだと思うんだけど」
藤村 「元となる筆跡からプロファイリングしましたから」
吉川 「本当? 急に胡散臭くなってきたな」
藤村 「お? 70代男性と女性。夫婦。痩せ型で日に焼けてる。ファッションにはあんまり頓着しない」
吉川 「それはどの人です?」
藤村 「このほうれん草をつくった人です」
吉川 「生産者シールがあるもん! それ見てるでしょ。そのまんま言ったよね? 俺でもできるよそれなら。長谷川農園の」
藤村 「いいえ? 長谷川農園なんて全然知りません。ほうれん草から導き出しました」
吉川 「本当かよ」
藤村 「はい、50代男性。身長175cm前後、数ヶ国語を話し金銭的には裕福」
吉川 「それは誰をプロファイルしたんですか?」
藤村 「このDVDのパッケージの人です」
吉川 「ジャッキー・チェンだもん。知ってるでしょ?」
藤村 「ジャ……? チェ?」
吉川 「本当に知らないの? 知らないで身長とか当てたの?」
藤村 「あくまでプロファイルでわかることだけですから。へぇ、有名な方なんですね」
吉川 「なんか思ってたのと違う方向に行ってるんだよな」
藤村 「おおっと、50代男性、身長170cm前後、筋肉質、3回の離婚歴あり、金銭的には裕福、主に声優は森川智之」
吉川 「トム・クルーズだもん。見ればわかるやつ!」
藤村 「トム……?」
吉川 「嘘だろ。声優は森川智之まで当てて全然知らないってことある?」
藤村 「有名な方なんですか?」
吉川 「むしろ無名な人をなんで声優が吹き替えると思ったの?」
藤村 「私はあくまでプロファイリングしただけなので。個人を特定するものじゃないんですよ。そういう傾向のある人物というのしかわかりません」
吉川 「もう絶対わかってやってるでしょ? おかしいよ」
藤村 「じゃあそこ、20歳前後、女性、痩せ型、執着心が強い」
吉川 「それ誰? どの人?」
藤村 「そこの……」
吉川 「どの人? どれを指してるの?」
藤村 「ほら、そこに薄っすらいる。浮いてる女性」
吉川 「……? いないけど?」
藤村 「あ。じゃあいいです」
吉川 「待ってよ。なに? 怖い。なにかいるの?」
藤村 「20歳前後、女性、痩せ型、執着心が強い」
吉川 「いや、プロファイリングじゃなくてよ。薄っすらってなに? どういうこと?」
藤村 「いいならいいです」
吉川 「いいならよくないよ! オバケ? そういうのがいるの?」
藤村 「そう一括りにするのはよくない。プロファイリングは、加害者という一括りから人物を浮かび上がらせる技術体系ですから」
吉川 「オバケは話が違うだろ。というかもうそれが見えるのは別の能力じゃん」
藤村 「大丈夫です。特定はできてますから」
吉川 「なにが大丈夫なの? 特定できてもいるんでしょ? いる事自体が嫌なんですけど」
藤村 「そうですか。では私の知り合いに除霊ができる人がいるので紹介しましょうか?」
吉川 「お願いします」
藤村 「はい。その人は60代男性、身長は180cm程度、恰幅がよく声が低い。和装を好み頭髪は少なめです」
吉川 「手がかりしか教えてくれないの?」
藤村 「プロファイラーですから」
暗転
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