影千代

吉川 「2月22日は忍者の日なわけだけど」


藤村 「待ちに待った日だな」


吉川 「そう? 待ってる人あんまりいない気がするよ。一般的には猫の日としてのほうが馴染んでる」


藤村 「惜しいな」


吉川 「惜しい?」


藤村 「そう。どっちも惜しい。忍者の日を喜ぶ者も猫の日を喜ぶ者もちょっと惜しい。忍者で猫、つまり2月22日は影千代を称える日にすべきだ」


吉川 「影千代って、忍者ハットリくんに出てきたケムマキの手下の猫?」


藤村 「そう。影千代の苦労を思うと、俺は涙が出てくるんだ」


吉川 「影千代の苦労を思ってるの? 今、令和だよ?」


藤村 「なに和だろうが関係ない。そもそも世間はケムマキの評価が間違ってると思うんだよ」


吉川 「ケムマキって嫌なやつでしょ? 昔のスネ夫と同じ声の」


藤村 「その認識が間違ってる。ケムマキは努力もするし知恵も度胸も行動力もある。ちゃんと喜怒哀楽を示して人間らしく愛されるキャラなんだよ」


吉川 「そうか~? 意地悪じゃん」


藤村 「なにもわかってないな。ケムマキの唯一の欠点、それは自尊心が低いことなんだよ。だから他人から承認されることを求めてしまうしケンイチ氏にちょっかいをだしてしまうこともある」


吉川 「普段からケンイチ氏って呼んでるの?」


藤村 「そもそも悪いのはハットリなんだよ」


吉川 「そっちは呼び捨てだ」


藤村 「あいつさ、周りの人間にわざわざ名字でハットリと呼ばせてるんだよ? 伊賀の名門であるという出自をひけらかして。めちゃくちゃ嫌なやつじゃない?」


吉川 「感情が強いな。伊賀者に親でも殺されたのか?」


藤村 「能面みたいに表情に変化がないしさ。ケムマキと正反対。人間味がない。あいつはロボットだよ」


吉川 「忍者だろ」


藤村 「忍者としての修行で人としての感情を失ったんだよ。そんな恐ろしい存在が目の前に現れるんだぜ? ケムマキとしては黙ってられないだろ。大切な友達たちになにかあってからじゃ遅いんだよ。忍術に精通したケムマキだけが、それを防ぐことができるんだ」


吉川 「お前の熱の入りようが強すぎてケムマキがいいやつに思えてきた」


藤村 「ケムマキはもともといいやつなんだよ。あいつは悪いことをしたいわけじゃないんだ。ただハットリが人の心を忍術によって幻惑していくのを阻みたいだけなんだよ」


吉川 「ハットリの奴め」


藤村 「あいつさえいなければケムマキはちょっと器用なみんなの友達として楽しく過ごせるというのに。ハットリがケムマキを戦場に引き込んだんだ」


吉川 「恥ずかしながら俺も今までハットリの思惑通りに踊らされてたよ」


藤村 「しかもハットリの野郎、シンゾウや獅子丸と徒党を組んで来るからな。ズルいんだよ」


吉川 「そうか。弟はズルいな」


藤村 「こっちの頼みの綱は影千代だけだ。この二人でハットリたちの支配から市民を守らなければならない」


吉川 「ケムマキ、影千代、頑張ってくれ!」


藤村 「影千代も忍猫になるためには厳しい修行を耐え抜いたのだろう。ケムマキは自尊心が低いしあまり人を褒めることもないから影千代は苦労しっぱなしなんだよ」


吉川 「うぅ、影千代。泣けるな……」


藤村 「2月22日は全国民を挙げて影千代の苦労を偲ぶべきなんだよ」


吉川 「全くその通りだった」


藤村 「さて続いて、チンプイのルルロフ殿下どんなやつか問題ですが」


吉川 「令和だぞ!」



暗転

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