UFO

吉川 「UFOってあるじゃん?」


藤村 「あると決まったわけじゃない」


吉川 「ちょっと待って。その有る無しの問題に行く前にさ。UFOって言葉があるじゃない?」


藤村 「いや、どうかなぁ。断言はできない」


吉川 「あるはあるでしょ。先に進ませてくれ。そこはまだ問題提起じゃないから。言葉はあるという前提で話を進ませていい?」


藤村 「あるという仮定でね。あくまで仮定で。ことは慎重を要するから」


吉川 「うん。あれって最近はUFOって言わないんだって」


藤村 「どっちなんだ? ある話をしてるのか、ない話をしてるのか?」


吉川 「違うの。ある話もない話もしてなくて、UFOってのはUnidentified Flying Object、つまり未確認飛行物体の略じゃない? それが最近はUAP、Unidentified Aerial Phenomena、つまり未確認空中現象と呼ばれるようになったらしい」


藤村 「いいや。俺は信じないね」


吉川 「違うんだよ。これは信じるとか信じないの話じゃなくて、そうなってるんだという現実の話で」


藤村 「じゃあお前はオバケを信じるのか?」


吉川 「何の話? 幽霊という現象は信じていないけど」


藤村 「そのオバケが最近はオバサンと呼ぶようになったと言われたらどうする? オバサンなんていないと主張するのか? 街で見かけるオバサンにどう申し開きするつもりだ」


吉川 「そんな話をしているわけじゃないんだけど。それにオバケをオバサンと呼ぶ風潮なんてないだろ。UAPに関してはアメリカの国家情報長官室の報告書でそうなってるんだよ」


藤村 「なんでもアメリカの言いなりかよ!」


吉川 「急にそんな政治的なツッコミ方しないでくれよ。UFOはそもそも英語だろ」


藤村 「うまい・ふとい・おおきい・だろ!」


吉川 「日清焼きそばU.F.O.じゃん。日清焼きそばU.F.O.の話だと思ってたの、最初から?」


藤村 「だいたいさ。UFOはユーフォーだろ。もう馴染んでるじゃん。すでに外来語化した日本語と言ってもいい。でもUAPってなに? なんて発音するの? ウァプー! っていうの? 恥ずかしくない? プーの部分が特に」


吉川 「別にプーと決まったわけじゃない。ピーでもいいだろ。ペーでもいい」


藤村 「ウァピー! って言うのか? 空を見上げて。そんなの宇宙人に笑われるぞ。『アイツラうぁぴートカイッテル。カトウナセイブツ。ミナゴロシ』とか言われるぞ」


吉川 「さっきUAPがいるのかいないのかを話してたくせに、なんで宇宙人のキャラ設定がそんなに雑なんだよ」


藤村 「UAPがいるかいないかの話はしてない! UFOがいるかいないかの話だ!」


吉川 「だから。UFOはUAPだろ。呼び方が変わっただけで指し示す存在は変わらない」


藤村 「そんな勝手に替えられたら宇宙人のほうが戸惑うだろ! なんで地球人は自分たちの都合しか考えないんだ!」


吉川 「発言がチョイチョイ宇宙人目線なのはなんでなんだよ」


藤村 「そっちこそ視野が狭すぎるんだよ。俺が地球代表として宇宙人に挨拶するとするだろ? 『へぇ、これがウァピーですか』って恥ずかしくて言えないよ。『ユーフォーですか』って胸を張って言いたい」


吉川 「今度は地球代表目線なの? ならないよ? その心配はキミがすることじゃないよ絶対に」


藤村 「絶対にないとは言い切れないだろ!」


吉川 「そりゃまぁ、ないとは言い切れないけど」


藤村 「UFOがいるかもしれない、というくらいの確率で俺が世界大統領になるかもしれないわけだ」


吉川 「わかった」


藤村 「わかってくれたか」


吉川 「UAPいないわ」



暗転

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