バンクシー

吉川 「バンクシーって知ってる?」


藤村 「なななな、何のことです? 急に」


吉川 「だからバンクシー」


藤村 「バババ、バンクシー!? なんでお前がバンクシー知ってるの?」


吉川 「普通に知ってると思うけど。有名でしょ」


藤村 「いや、それほどでもないですよ。まぁ美術界ではね、それなりに知ってもらってるかもしれないけど」


吉川 「え? なに? バンクシーのこと詳しいの?」


藤村 「全然? 主にステンシルなどを使う正体不明のアーティストで神出鬼没のそのアートスタイルからカリスマ視されてることなんか全然知らない」


吉川 「よく知っているな。お前まさか」


藤村 「違います! 俺じゃないです。俺はバンクシーなんかじゃないです!」


吉川 「それはわかってるよ。お前まさかファンなんじゃないかと思っただけで」


藤村 「あ。違うの? なんだ、疑われたのかと思った。焦っちゃった」


吉川 「いくらなんでもお前なんかがバンクシーだとは思わないだろ」


藤村 「は? なにその言い方。もし俺がバンクシーだったら相当失礼じゃない?」


吉川 「でもお前はバンクシーじゃないだろ」


藤村 「わからないじゃないか。正体不明なんだから。確率的には0ではないだろ?」


吉川 「お前は絵が下手じゃん」


藤村 「そんなことないクシー」


吉川 「ん? お前に芸術的な才能あるの?」


藤村 「それは試してみないとわからないクシー」


吉川 「語尾、唐突にどうした?」


藤村 「なんのことクシー?」


吉川 「そんな無理矢理な語尾じゃなかっただろ」


藤村 「生まれた時からこうだったクシー」


吉川 「さっきまで違ったじゃない。それにどことなくふなっしーっぽいんだよな」


藤村 「ふなっしーの方が真似してるクシー」


吉川 「ダメだよ、そんな取り繕うように語尾だけ変えたって」


藤村 「でもバンは小さい頃からこれで話してるクシー」


吉川 「おい待てよ。なんつった?」


藤村 「だからバンは小さい頃から……」


吉川 「バン? 一人称がバンなの? 名前にどこにもバンがついてないのに?」


藤村 「お前は名前のどこかに俺がついてるのクシー? 俺川って名前なのクシー?」


吉川 「急に不自然すぎだろ。さっきのさっきまで普通だったのにおかしいだろ」


藤村 「バンはなるべく人と話す時はこの癖がでないよう無理してたクシー」


吉川 「今油断して出ちゃってるんだ? そんなわけあるかよ」


藤村 「信じる信じないはいいクシー。ただこれだけは言っておくクシー。バンはバンクシーじゃないクシー」


吉川 「あぁ、うん。なんかこれは触れちゃいけないことだったのかな?」


藤村 「人に話したりしないで欲しいクシー」


吉川 「そうだね。人に話したらまず俺の頭が心配されるものな」


藤村 「それを聞いてバンも安心したクシー」


吉川 「そういえばふなっしーの正体ってさ」


藤村 「ふなは違うなっしー!」



暗転

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る