おせち

藤村 「おせち料理っていうのも現代の感覚からするとあんまりそそられなくない?」


吉川 「確かに。この飽食の時代。元日もコンビニが開いてるのに前年に作った冷たい料理を食べるってのは侘しさすらあるよね」


藤村 「意味があるっていうのもさ。なんか長く生きられるようにとか子宝に恵まれますようにとか、だいたいダジャレだしね」


吉川 「よく働くように、なんていうちょっと罰ゲームっぽいやつも紛れてるからな」


藤村 「そんな現代の価値観からズレたおせち料理に一石を投じるべく、私が新しいおせち料理を考えました」


吉川 「そうか。考えてしまったか。考えてしまったというのなら聞かねばなるまい」


藤村 「この高齢化社会に適応した全く新しいおせち料理。まずは竜田揚げ」


吉川 「あー、揚げ物は嬉しいね。やっぱり揚げ物あって欲しいよ。既存のおせちは煮物ばっかりだから」


藤村 「でしょ? 揚げ物は幸福度が高いから。ちなみに竜田揚げはチンコがよく立つようにという願いを込めてる」


吉川 「ん? ん? チンコって言った? 何その願い」


藤村 「お年寄りに聞いたんだよ、今までの人生で悲しかったことはなんですか? って、そうしたらチンコが立たなくなったことと言われてさ。確かに言われてみればそうだなと思って、いつまでもチンコが立つように祈りを込めた」


吉川 「そのチンコお爺さんを全人類代表みたいに考えて大丈夫? お爺さんの思いを否定したくはないけど、もうちょっと他にもあるんじゃない?」


藤村 「続いてホッキ貝」


吉川 「え、待って」


藤村 「これは勃起がいいと掛けてる」


吉川 「全部それでいくの? シモネタっていうのもしょうもないと思ったけど、シモネタの中でもそこだけ? 多様性なし?」


藤村 「お爺さんの無念を受け止めたから」


吉川 「お爺さんは他にもいるよ? お婆さんだっている。若い人もいるし色々な世代や性別がいるんだよ?」


藤村 「続いて赤まむし」


吉川 「そういえば初夢なに見た?」


藤村 「滋養強壮にバッチリ効果がある」


吉川 「頑迷に続けるじゃん。せっかく気を利かせて話を変えようとしたのに」


藤村 「さらにすっぽんの生き血」


吉川 「なんというかスポーツ新聞のエロ記事みたいな生臭さなんだよな。ポップなエッチさみたいな笑って話せる感じじゃないの。もうよくない?」


藤村 「これは効きまっせー! もうビンビン」


吉川 「この話を全部受け止めたところで何一つ得るものがないんだよ。人生でこれほど無駄な時間はないよ」


藤村 「あとタケリタケ」


吉川 「なにそれ?」


藤村 「チンコに非常によく似たキノコ。毒はないけどすごいまずいらしい」


吉川 「フォルムできたか。そもそもまずいっていうのは新しいおせち料理のコンセプトとしてもうおかしいでしょ。最低限美味しい方向でいってくれないと」


藤村 「キノコは全体的にチンコを想起させるので頼り始めると全部キノコ料理になってしまうから変化球でいれた」


吉川 「初っ端から大暴投してるんだよ。変化球とかそういう問題じゃなく」


藤村 「最後にバイアグラ」


吉川 「もう既存のおせちでいいよ。そっちの方が全然マシだった。離れてわかる故郷の良さ。豊かさを願うようなダジャレのなんと夢のあることか」


藤村 「これは櫓を倍建てられるようにという願いを込めていれた」


吉川 「豊かさ願ってるのかよ!」



暗転

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