シン・デレラ2

魔法使 「言いましたよね? 12時には戻れって」


デレラ 「……はい」


魔法使 「今何時ですか?」


デレラ 「1時……」


魔法使 「1時52分。もうすぐ2時です」


デレラ 「そ……。ほ……。ホントですね」


魔法使 「なんかモグモグしてます?」


デレラ 「ひてません」


魔法使 「モグモグしてるでしょ。食べてるの? なにか?」


デレラ 「挟まってた。鶏肉みたいのが……」


魔法使 「こっちは真剣に怒ってるんですけど」


デレラ 「あの、ネズミが馬車の馬だったので……」


魔法使 「道に迷ったんですか?」


デレラ 「迷ったっていうか、ネズミが馬って気になっちゃって」


魔法使 「気になったから何なんですか。12時には戻ってきて全部魔法省に返さないといけないんです。そうしないと延滞料金がかかると言いましたよね」


デレラ 「……はい」


魔法使 「しかもガラスの靴を片方紛失してる。紛失した場合は実費で弁償しなければならないんですよ?」


デレラ 「あの、多分王子様側で保管してるんじゃないかと思うんですが」


魔法使 「12時に戻るってことは少なくとも11時前にはお城を出なきゃならないに決まってますよね」


デレラ 「そう……。ですかね。あの馬がネズミだから……」


魔法使 「馬のせいにしない! 早め早めに行動してればこうならなかったはずですけど?」


デレラ 「時計が……。普段陽が昇ったらっていう感じで生活してるもので」


魔法使 「だから10時半にアラームが鳴るようにセットしたの渡しましたよね」


デレラ 「鳴り……ましたかね?」


魔法使 「止めてるじゃないですか。スヌーズ2回で10時50分に止めてる! 3回鳴ってるんですよ。気づいてるじゃないですか」


デレラ 「あー。止めた……かな? ちょっとごたついてたんで、ひょの時はもひれないれす」


魔法使 「今なにか食べました?」


デレラ 「はれへまへん」


魔法使 「食べてるでしょ。モグモグしてる。ほっぺ膨らんでるもん。なに食べてるんですか?」


デレラ 「なんか勝手に。口の中に」


魔法使 「勝手に出てこないでしょ。だいたいなんでそんな時間まで。そんなに王子様と話が盛り上がったんですか?」


デレラ 「いえ、王子様とは……結局一言も話せず」


魔法使 「話してないの? なにしてたんですか?」


デレラ 「……ビュッフェ」


魔法使 「ビュッフェ?」


デレラ 「ビュッフェスタイルだったので。舞踏会なのに。そんなの聞いてなくて」


魔法使 「そりゃ食事くらい出るでしょ」


デレラ 「食事は出たとしてもビュッフェだって思わなかったんで。そういうのちゃんと連絡受けてなかったから、そういうのちゃんと言ってもらわないと……」


魔法使 「知りませんよ。どんな食事のスタイルかなんて」


デレラ 「ビュッフェはしょうがないじゃないですか。いっぱい並んでるんで」


魔法使 「並んでるからなんなんですか。ずっと食べてたんですか?」


デレラ 「しょうがないじゃないですか。だって見たことないごちそうばっかりだし。急いでたからなにも食べてなかったし。それなのにビュッフェじゃもうどうしようもないじゃないですか」


魔法使 「時間忘れて食べてたんですか?」


デレラ 「ちゃんとペース配分はしました。デザートもいけるように。でもデザートがなかなか出なくて」


魔法使 「はぁ?」


デレラ 「最初に結構なくなっちゃってたんで、新しいやつ出してくれるの待ってて。こっちも最初からデザートいってればよかったんですけど、そんなことできないじゃないですか? お寿司もあったんですよ?」


魔法使 「全部食い物の話?」


デレラ 「言ってくれればタッパーも持って行ったのに。全然持って帰れないし」


魔法使 「なんでそんなに食い意地張ってるんですか?」


デレラ 「違うんです。魔法使いさんにも食べてもらいたいと思って持って帰ろうかと。これ……」


魔法使 「あ! もう片方のガラスの靴に! 舟盛りみたいになってる!」


デレラ 「入れるものなかったんで」


魔法使 「いや、靴! 靴に入れる? 食べ物を」


デレラ 「つきましては、来月も舞踏会があるらしいので……」


魔法使 「図々しいな。次も行く気か」


デレラ 「今度のドレスはワンピースタイプのお腹圧迫しないのでお願いします」


魔法使 「食う気満々!」



暗転

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