人狼
吉川 「なぁ、あいつ狼っぽくない?」
藤村 「え、なに?」
吉川 「怪しいと思うんだよね」
藤村 「やめなよ」
吉川 「え?」
藤村 「よくないよ、そういうこと言うの。差別だよ?」
吉川 「え? 何? 違う。今ほら、人狼やってるじゃない?」
藤村 「うん」
吉川 「だからそれで狼なんじゃないかって疑ってて」
藤村 「いい加減にしなよ。他人にそういうレッテルを貼るのは差別だと言ってるの。何を根拠に彼が狼だと言ってるわけ? 毛深いから? そういう発言こそがね……」
吉川 「待って待って。違う。別に彼に対するそういう特別な感情はないんだよ。ただ人狼ってゲームじゃない? そのゲームの中で疑ってるだけで、そういうゲームだから」
藤村 「確かに彼は顔も整ってるわけじゃないし、体臭もきついし、言葉遣いも乱暴であんまり育ちが良くないなって感じるよ。服のセンスだって悪いよ。だけどそれと狼じゃないかと疑うのは別問題でしょ」
吉川 「そっちの方が辛辣な指摘してない? 言うか、そういうこと。普通」
藤村 「確かにあの顔じゃ絶対に前科があるはずだよ。よく知らないけどないわけないよ? だからといって彼を狼と決めつけるのは人道的に許せない」
吉川 「お前ー! 結構超えてはならぬ一線を軽々とジャンプしたな。言っちゃダメだよそういうことは」
藤村 「レイプくらいはしてるでしょ。賭けてもいいよ。だけど証拠もないのに彼を狼と決めつけるのだけはダメだ」
吉川 「お前の言ってることの証拠はどうなんだよ。全部推測で言ってない? それこそがいけないことでしょ」
藤村 「俺?」
吉川 「そうだよ」
藤村 「今度は俺が狼だと決めつけるわけだ? 最低だな」
吉川 「違うよ? もう狼とか人間とかじゃなくて、人間は人間でも人間のクズだと指摘してるだけだよ」
藤村 「それは推定無罪だから。俺が狼である証拠もクズである証拠もないわけだから」
吉川 「でも誰かを吊らなきゃいけないんだよ。人狼だから。怪しい人間を」
藤村 「人に! 人を! 裁く権利などない!」
吉川 「声がでかい。とてもいいことを言ってる風だけど、人狼なんだよ。現実とあやふやになるのよくないよ」
藤村 「どんなものにも尊厳はあり、それを犯す権利はないんだよ。お前って最低なやつだな」
吉川 「俺の方が? 俺はあくまでゲームでの出来事としてやってるだけで」
藤村 「そうやってゲーム感覚で人の命を弄ぶわけか」
吉川 「ゲームだからな! ゲームはゲーム感覚でやるよ。ゲームを現実感覚でやってるお前のほうが怖いよ」
藤村 「この俺の目が赤いうちは、どんな人間も私刑なんてさせない!」
吉川 「……なんで目が赤いの?」
藤村 「あのな、そういう人の外見に関することを面白半分に話題にするのはだな」
吉川 「いや、赤い。目。なんで?」
藤村 「……ガブッ!」
暗転
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