喋る剣
剣 「お前が我が主か?」
吉川 「はっ!? 剣が……」
剣 「驚いたか。我は意志を持つ剣」
吉川 「なんてこった。思ったより声が高い!」
剣 「声質? 声質に驚いたの? まず喋ったこと対して感想はないのか?」
吉川 「最近は家電もしゃべるから」
剣 「そういうしゃべる家電と一緒にされちゃ困る。根本的に違う」
吉川 「急に主と言われてもこっちは雇い主になるわけだよね?」
剣 「ま、まぁそうだな」
吉川 「じゃ自己PRをどうぞ」
剣 「そんな感じで接してくると予想してなかったのだが、まず我はかつて最強と謳われた剣士で、それが魔女の呪いによってこのような姿になったのだ」
吉川 「なるほど。特技は?」
剣 「特技って、剣だから切るのが得意だと思います」
吉川 「よく切れる?」
剣 「いや、その。剣の切れ味もさることながら、元剣士という経験を活かして様々なアドバイスができると思います」
吉川 「その元剣士時代に特に熱心に打ち込んだものとかありますか?」
剣 「打ち込んだというと、主に人に打ち込んでましたが」
吉川 「はいはい。コミュニケーション能力ね」
剣 「いや、打撃と言うか斬撃と言うか。でも命をかけて切り合うと言葉以上のことがわかったりするのである意味コミュニケーション能力と言えなくはないです」
吉川 「私の剣となったらこういうことがしたいなどの希望はありますか?」
剣 「切ること以外は不器用であまり自信がありません。しかし切ることに関してだけは誰にも負けません」
吉川 「う~ん。切るだけとなると正直うちでは難しいかと思います」
剣 「いやあの! 喋る剣ですよ? 喋って切る。普通できます?」
吉川 「ヘイシリ。明日の天気教えて」
Siri 「明日は天気がよくなさそうです。最低気温は摂氏-1℃でしょう」
吉川 「これは喋るスマホ。天気予報もスケジュール管理もできる」
剣 「そういうのと一緒にしないでくださいって! それは魂がないでしょ。こっちは元剣士の魂があるの!」
吉川 「それを証明できますか?」
剣 「証明って、剣が喋ってるんですよ?」
吉川 「じゃ、スマホも魂があるんじゃないですか?」
剣 「違う違う。それは受け身じゃないですか。こっちは自発的に色々言いますよ」
吉川 「面倒くさいですね」
剣 「いや、黙ってろって言われればもちろん黙ってますけど」
吉川 「それならこのスマホも黙ってろと言われた魂のあるスマホかもしれないじゃないですか?」
剣 「なんでスマホにそんなに肩入れするの? しゃべる剣ですよ。珍しい。魔女の呪いさえ解ければすぐに証明できるのに!」
吉川 「そうですか。だったら……。ヘイシリ、魔女に呪いを解いてとメッセージ送って」
Siri 「魔女にメッセージ『呪いを解いて』を送りました」
剣 「送れるの? 魔女とつながってるの? あなたひょっとして偉い人?」
吉川 「あ。返信来たわ。了解だって」
剣 「やったー! これで呪いが解けるの!? うぅ、嬉しい! ずっとこのままかと思っていた。あなたを主に選んでよかった。いやぁ、嬉しい。これ……いつ解けるんですかね? っていうか、その女の人はどこから現れたの?」
Siri 「Siriです」
剣 「あー……。そっちも複雑な物語背負ってたのか」
暗転
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