多目的

藤村 「クリスマスといえば多目的ノコギリだけどさ」


吉川 「クリスマスといえば? 一体どの辺りが?」


藤村 「かなり色々なものが切れるらしいんだよ」


吉川 「待って待って。クリスマスといえばの部分は? 全然ちなんでないと思うんだけど」


藤村 「多目的だからさ。クリスマスだし色々とさ」


吉川 「なにが!? クリスマスのなにが多目的なの?」


藤村 「意外と一家に一本あるといいと思うんだよ」


吉川 「ノコギリはいい! ノコギリはちょっとあとにして。クリスマスと多目的の関係性をしっかりと詰めよう」


藤村 「怖い怖い。なんでそんな肉薄してくるの? クリスマスになにか嫌な思い出でもあるの?」


吉川 「違くて! クリスマスはいいよ。ただ聴き逃がせないでしょ。クリスマスと言えばっていうのは」


藤村 「やめる? この話題。なんかゴメンな」


吉川 「やめないでよ! 余計気持ち悪くなるでしょ。お前は何を持ってクリスマスといえば多目的ノコギリだと思ったわけ?」


藤村 「そんな勢いで食って掛かられるとは思ってなかったよ。なんか触れちゃいけないところに触れたみたいだね。本当に申し訳ない」


吉川 「いやいや。俺のセンシティブな部分じゃないのよ。そっちがさ、理屈に合わなすぎるからクリスマスと言わないでしょ」


藤村 「今年ももうすぐ終わるって早いよなぁ」


吉川 「話そらそうとしてる? え? なに? 最初からなにもないって言うならそれでいいよ。いいのね?」


藤村 「年末のさ、あるじゃん。あの~……多目的ノコギリ」


吉川 「ない! なに? なんで出てくるの? 多目的が」


藤村 「怒ってる? どうしたんだよ。ちょっと落ち着こうよ」


吉川 「これが落ち着いていられますか。何の話題でも多目的なの? そういうこと? 多目的だからどんな話題にも適応するってこと? 正月の多目的ノコギリは?」


藤村 「ブフッ! 正月とか。フフフッ。何だよいきなり正月に多目的ノコギリとか。わけわからないよ。ウケるわ」


吉川 「そこはウケるんだ。多目的に正月は含まれてないんだ。法則がなにかあるの? 俺が知らないだけで。金曜だから?」


藤村 「金曜がどうしたの?」


吉川 「違うのか。金曜も多目的に含まれてないんだ。多なのに! 多なのに弾くところは弾くんだ」


藤村 「そう言えば筋トレしてたのね。それで意外といいのが多目的ノコギリで……」


吉川 「はい来た! そこは多に含まれるのね。筋トレは多の中。ヨガは?」


藤村 「ヨガはヨガ用のがあるでしょ」


吉川 「ヨガは含まれないー! 難しい! 謎解き的なやつなのか? ヨガ用のノコギリってなに?」


藤村 「どうしたの? やたらノコギリに執着するなぁ」


吉川 「してなかったよ。さっきまでノコギリのことなんて金輪際考えたことなかったよ。急浮上したんだよ。お前のせいで」


藤村 「なんか多目的に対して気になってるの?」


吉川 「そう! やっとそこに気づいてくれた。なんなんだよ、多目的って」


藤村 「知らないの? 多目的」


吉川 「知ってた気になってたけど、しっかりと考えたことはなかった。改めてお互いの多目的に対する認識をすり合わせたい」


藤村 「わかった。付き合うよ。あれだよな。サングラスかけてオールバックのさ」


吉川 「タモリだよ! それはタモリだよ! え? 多目的ってタモリ的なことを言うの? そういう法則なの? タモリの法則ってジャングルTVみたいな?」


藤村 「こっちが一言言うと10返ってくるな。落ち着けよ」


吉川 「もう勘弁してくれ。わからないんだよ。世界観が。なんなんだよ。クリスマスってなんなんだよ。クリスマスといえばなんなの?」


藤村 「ノコギリの話? 今する?」


吉川 「そっちにかかってたのかー!」



暗転


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