○○しないと出られない部屋

藤村 「え? ここってもしかして……」


吉川 「○○しないと出られない部屋って書いてある」


藤村 「まじでー!? お前とかよ。絶対やだよ。無理無理」


吉川 「○○の部分がはがせるようになってる。めくるよ?」


藤村 「絶対お前とだけはダメ。本当に。気色悪い」


吉川 「会話をしないと出られない部屋、だって。あ、鍵開いた」


藤村 「え……。あ、そう? そういうイージーなやつなの?」


吉川 「出ようぜ」


藤村 「え? 出る? 出るの? そりゃ出るか。あれ? そういう感じだったのか。なんか肩透かしと言うか。ふふふ、変な想像しちゃったよ。俺ってバカだなぁ」


吉川 「あ、奥の部屋も同じ感じだ。○○しないと出られない部屋って貼ってある」


藤村 「あー! そういうことか。徐々に難易度が上がってくやつじゃん。もう最悪だよ。絶対イヤだわ」


吉川 「めくるよ? 会話をしないと出られない部屋、だって。鍵開いてる」


藤村 「同じ? 同じってことある? 部屋を分ける必要性もないし。同じはおかしいでしょ」


吉川 「あー、次の部屋もだ」


藤村 「今度は違うやつだよね?」


吉川 「めくるよ? ハグをしないと出られない部屋だって」


藤村 「あちゃー! きたきた。そういうことだよ。もうこの先予想つくじゃん。やだよお前となんか」


吉川 「ハグ無理か?」


藤村 「ハグくらいはいけるよ? だけど、その先もあるわけでしょ? いいよハグなら。嫌だけどな? 別に喜んでするわけじゃないよ? お前となんか。だけどまぁ、そういうシステムなんだからっていうことでするのはいいよ」


吉川 「うん。ハグ。鍵開いた。ほらまた次も同じ部屋」


藤村 「あー、もうやだ。絶対イヤな予感するよ。俺はここで無理かも」


吉川 「めくるよ? 会話しないと出られない部屋。鍵開いてる」


藤村 「なんなの? なんでイージー挟んであるの? この部屋ある意味ある? ここはもう廊下ってことでいいじゃない」


吉川 「次の部屋、めくるよ? ハグをしないと出られない部屋」


藤村 「またハグ! 同じっていうシステムがわからないのよ。前回のハグは乗り越えたけど今回無理ですってなる? もう一度乗り越えたやつは見てる方も盛り上がらないだろ。惰性でできるんだよ、ハグなんて」


吉川 「いや……」


藤村 「え? なに? 余裕だろ? ハグだぞ」


吉川 「さっきした時。匂いがちょっと……」


藤村 「……それはごめん。自分では気づかなかったから」


吉川 「そんなに凹まないでよ。かえってごめん。いいよ、ハグしよう」


藤村 「なんかごめんな。いや、ちょっと。俺の方もこれ恥ずかしくて無理だわ」


吉川 「ごめんごめん。大丈夫。そんな言うほどじゃないから」


藤村 「いい? ハグ」


吉川 「あ、うん。……あ、鍵開いたね。ほら行こう」


藤村 「うん」


吉川 「どうした、そんなに離れて。気にしてる?」


藤村 「俺無理かも。この先」


吉川 「それは最初から言ってるじゃん。改めてどうした」


藤村 「っていうか、最初の方は同じ風に言ってたけどさ、それはなんか照れ隠し的な。内心いけるっていう気持ちを持って言ってただけみたいな部分があったから。今の俺はもうなんかいけないかなって」


吉川 「そんなこと言わないでよ。ボクは大丈夫だよ。この先どんなのがあっても受け入れる。絶対に」


藤村 「吉川……」


吉川 「お互いにだからな。お互いに協力してやっていこうって話だから。ボクだけでもダメだしキミだけでもダメ。でもボクは他のやつじゃなくてよかったとは思ってるよ」


藤村 「ありがとう。うん、なんかこういう部屋に来て。ちょっと良かったとか思ってたりして」


吉川 「次の部屋、めくるよ?」


藤村 「パターンからすると会話だよ。もうそこ簡単なやつだから」


吉川 「相手の心臓を素手で引きずり出して潰さないと出られない部屋、だって」


藤村 「あ? いや、これ難易度とかそういう問題じゃ」


吉川 「よし。やるか!」


藤村 「いやいやいや、受け入れちゃわないで! 覚悟のレンジ広すぎだよ!」



暗転

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