相撲

吉川 「……で、話って何?」


藤村 「いやね、相撲について思いのたけを打ち明けたくて」


吉川 「相撲? 相撲って、あの相撲?」


藤村 「相模じゃないよ」


吉川 「わかるよ。字は似てるけど、スモウとサガミは間違えないだろ」


藤村 「相撲さぁ……変じゃね?」


吉川 「なにが?」


藤村 「なにがって、全部変だろ。なんだ、あの裸のブヨブヨは。男同士で抱き合って。なにやってんだ」


吉川 「なにやってるって……相撲やってるんだろ」


藤村 「もう、全体的におかしいだろ。ちょっと冷静になって考えろ。なんで裸?」


吉川 「……暑いからじゃない?」


藤村 「あー、デブだしね。だいたい、なんでデブなんだよ」


吉川 「遠くからでも見つかりやすいようにじゃない?」


藤村 「いや、そんなに変わらないだろ。それに何? あの頭。変なちっちゃいキャノン砲みたいの乗っけた髪型」


吉川 「ちっちゃいキャノン砲なんじゃね?」


藤村 「撃つのか! あそこから何か出るのか!」


吉川 「鬢付け油がにゅ~って」


藤村 「きっもー! もう、全体的におかしいだろ。誰かつっこめよ!」


吉川 「いや、国技だしさぁ。つっこんじゃダメなんじゃないの? 右翼とかに怒られるんだよ」


藤村 「俺は戦うね。勧善と戦うよ! だいたい、あの上についてる屋根みたいなのはなに?」


吉川 「雨とか降ったときに……」


藤村 「いや、吊ってあるじゃん! なんか屋根の上に本物の屋根あるじゃん。降らないだろ雨」


吉川 「あの屋根を利用して技とかかけるんじゃないの? リバースキン肉バスターとか」


藤村 「相撲じゃないじゃん! 相撲にバスターってないよ」


吉川 「知らないよ。相撲の専門家じゃないもん」


藤村 「だいたい、なんで最初に塩撒くの?」


吉川 「なんかお清めだろ」


藤村 「そんな毎回お清めしなくてもいいだろ。一回につき小匙一杯程度でいいじゃん」


吉川 「そんな、味付けじゃないんだから。小匙とかじゃ見た目がいまいちだろ」


藤村 「見た目よりも味を重視しろよ!」


吉川 「いや、別に誰も食べないよ。土俵なんて」


藤村 「塩分取りすぎるとあれだから、砂糖とかさ、砂糖もパルスイートね。ターメリックとか」


吉川 「土俵をスパイシーにしてもしょうがない」


藤村 「もう全部おかしいことだらけだよ。デブのおっさんがTバックはいて」


吉川 「そういう趣味の人たちなんだよ」


藤村 「やっぱり! そうだったのか」


吉川 「そうなんだよ。みんな好きでやってるの」


藤村 「俺もそうじゃないかと思ってたんだよ。そうか、趣味か」


吉川 「だからケチつけちゃダメだ」


藤村 「長年、相撲に対して募らせていた思いがやっと溜飲下ったよ」


吉川 「そんなつまらないことを長年募らせてたのか」


藤村 「もう、誰も聞いてくれないんだもん!」


吉川 「一人相撲だな」



暗転

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