メガネ田

吉川  「なぁ、メガネ田」


眼鏡田 「なんだメガネ?」


吉川  「気を悪くしないで欲しいんだけど……」


眼鏡田 「どうしたメガネ。俺とお前の間で水臭いメガネ」


吉川  「お前さ、……メガネじゃないよな?」


眼鏡田 「うん。あ、うんメガネ」


吉川  「その語尾もなんかすごい不自然だし」


眼鏡田 「そんなことないメガネ。めちゃくちゃナチュラルでごわす」


吉川  「なんか、違う感じの語尾になってるし」


眼鏡田 「ちょっと間違ったナリ。あ……。もう、いいや」


吉川  「うわー、すごいグダグダになって放棄した」


眼鏡田 「生まれた時から慣れ親しんだ語尾とも、今日でお別れか」


吉川  「嘘つけ。まったく馴染んでなかったじゃないか」


眼鏡田 「オギャーメガネ! って生まれてきたからね」


吉川  「あのさぁ、根本的なこと聞くけど、なんでメガネなの?」


眼鏡田 「そんなのお前、じゃぁ、逆に聞くけど、なんで吉川はドブ臭いの?」


吉川  「逆にって、ドブ臭くないよ!」


眼鏡田 「それと一緒だよ。お前がドブ臭いように、俺も、メガネなんだよ」


吉川  「いや、全然意味わからない。え? っていうか、俺ってドブ臭いの?」


眼鏡田 「そ・れ・は・シークレットメガネだぜ!」


吉川  「なにがシークレットメガネなんだ。俺はドブ臭くない!」


眼鏡田 「じゃぁ、六歩譲ってお前がドブ臭くないとしよう」


吉川  「随分中途半端な歩数譲るなぁ」


眼鏡田 「ということは、俺はコンタクトなわけだ」


吉川  「なんで? なんで突然コンタクト出てきたの?」


眼鏡田 「いや、正確に言えばカラーコンタクト。ケント・デリカットばりの」


吉川  「ケント・デリカットはメガネじゃん! カラコンじゃないよ」


眼鏡田 「ということは、俺もメガネってことだ」


吉川  「いやいや、ということになってないよ! だって、メガネしてないじゃん」


眼鏡田 「心にメガネをしているのさ★」


吉川  「意味がわからないし、ちょっと気持ち悪いよ」


眼鏡田 「ハート・オン・メガネ」


吉川  「それじゃ、メガネに心が乗っかってることになる」


眼鏡田 「俺はそういう生き物なのさ」


吉川  「なんか気持ち悪いなぁ。だいたいさぁ、かければいいじゃん? メガネ」


眼鏡田 「馬鹿! メガネかけちゃったら、心のメガネとあわさってダブルメガネになっちゃうじゃん。プラマイゼロじゃん」


吉川  「いや、ダブルメガネの意味もわからないし。なんでプラマイなんだ」


眼鏡田 「いいか? 例えばだ。ハンバーガーあるだろ?」


吉川  「美味しそうなものに例えやがって」


眼鏡田 「あれは、パンにバーガーが挟まってるから美味しいんだよ。もし、ダブルメガネになったら、バーガーにバーガーをはさむことになっちゃう」


吉川  「え? っていうか、バーガーってなんだ? 肉のことか? 肉がバーガーなのか?」


眼鏡田 「まぁ、それはそれで美味しいけど」


吉川  「美味しいんじゃん! なにを例えたかったんだ」


眼鏡田 「つまり、俺はメガネをかけないけど、もうすでに十分すぎるほどメガネなんだよ」


吉川  「もう、色々とわけがわからない。なんでパンがバーガーになったんだ? そして、なんで結論をだしちゃってるんだ?」


眼鏡田 「お前が心配してくれなくても、俺の心には十分バーガーが挟まってる」


吉川  「バーガーの話になっちゃってるじゃん! メガネは!」


眼鏡田 「まぁ、メガネ的なバーガーっていうか。メガネ味のバーガー」


吉川  「どんな味だよ。もうなんていうか、馬鹿じゃね?」


眼鏡田 「お前がなんと言おうと、俺のメガネは曇らないよ!」


吉川  「なに上手い事言った風にしようとしてるんだ。お前、本当におかしいな」


眼鏡田 「お前もなッ!」


吉川  「いや、俺は普通だろ。ドブ臭いかもしれないけど普通だよ」


眼鏡田 「でも、そんなお前だから。俺とお前との友情は決して変わらない」


吉川  「あ、あぁ……」


眼鏡田 「このメガネにかけて。というか、メガネをかけて!」


吉川  「かけちゃった!」



暗転

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