解散

吉川 「なんだよ話って」


藤村 「実は……解散しようと思ってるんだ」


吉川 「え?」


藤村 「突然で悪いんだけど」


吉川 「解散って……」


藤村 「うん。いや、急にこんな事言われて戸惑うのはわかる。本当にごめん」


吉川 「え、う~ん。解散って、ボクと?」


藤村 「他に誰がいるんだよ? わかるよ、わかるけど、ごめん」


吉川 「えっと。まず最初にさ。ボクとお前の……なに?」


藤村 「落ち着けよ。急にこんなこと言われたらそうなるだろうけどさ。俺の中でもう決めたことだから」


吉川 「決めてるのはいいんだけど、なにの解散?」


藤村 「そうだよな。俺たちの間はもうコンビとか相棒とかそういうものじゃ表せない絆になってるから」


吉川 「そのぼんやりしたいい感じの言葉にしないで、具体的になに?」


藤村 「あえて言うならソウルメイトかな」


吉川 「あえて言うならとかじゃなくてさ。なんかあるでしょ? バンドとか劇団とかお笑いコンビ? 何を結成してたの?」


藤村 「そんなこと俺に言わせるなよ」


吉川 「言ってよ! 言わないのがカッコいい風の空気を出さないでバシッと言ってほしいんだけど」


藤村 「俺たちさ、いい時もあれば最悪の時もあったけど、ずっと一緒だったじゃん」


吉川 「おいおい。メモリーを語り始めた? そこじゃないんだよ。何なんだよボクたちの関係性は。そこをお互いに共有しないと気持ち悪いでしょ」


藤村 「たとえ解散したとしても、お前以上の存在はいないと思ってるよ」


吉川 「感情を揺り動かそうとしてるのかもしれないけど、でっかいのが詰まってて全然動かないんだよ。ビターッと栓されてるのよ」


藤村 「まぁ今まで冗談で『解散だ!』なんて言ったこともあったけど、本当に解散するとなるとしんみりしちゃうな」


吉川 「言ってた? その時ボクはなんて言ったの? その時のボクはすでに何かを結成していることに同意してたの? なにもかもわからない」


藤村 「お互いに歩んでいく道は違ってしまうけどさ。俺は普通の一般人としてこれからもお前のことを見てるから」


吉川 「ボクはなんなの? 普通の一般人としての道を歩んではいけないのかい? いつ道を踏み外したんだ? 身に覚えがなさすぎるんだけど」


藤村 「じゃ、最後に例のやつで終わりにしようか」


吉川 「例の? 例のなに? そういう決まりみたいのがあったという記憶がないのだけど。ひょっとしてボクがおかしいのか?」


藤村 「せーのっ! 吉川と藤村で~」


吉川 「え……。なに?」


藤村 「うん。こういう終わり方も俺たちっぽいな」


吉川 「なに? あってたの今の? なに? 怖い。なんなんだよぉ!」



暗転

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