必殺技

吉川 「で、どうしたいの?」


藤村 「欲しいんだよ。俺も」


吉川 「なにを?」


藤村 「決まってるだろ? 必殺技だよ」


吉川 「あのなぁ。必殺技ってどういうことかわかってるの?」


藤村 「かっこいい」


吉川 「そうじゃなくて、必殺ってことは、必ず殺すってことだよ?」


藤村 「かっこいいじゃん」


吉川 「そうじゃなくてさ、殺しちゃうんだよ? 殺人だよ?」


藤村 「そっか。かっこいいな」


吉川 「全然わかってないじゃないか。殺したらダメでしょ!」


藤村 「そういうのは手加減するよ」


吉川 「ほら、殺さなくなっちゃったら必殺技じゃなくなっちゃう」


藤村 「たまに殺す。週2くらいで」


吉川 「別にどんなペースでもいいけど、いや、ダメだけど。必ずじゃないとダメなの」


藤村 「絶対?」


吉川 「たまに殺す技だったら、稀殺技になっちゃうよ」


藤村 「うーん。かっこ悪いな」


吉川 「だろ? なんて読むのかもちょっとわからないし」


藤村 「じゃ、どうすればいい?」


吉川 「だから、殺すのをやめればいい」


藤村 「そうだな。それがまっとうな人間の意見だ」


吉川 「代わりに何かすればいい。必見技とかね」


藤村 「なにそれ?」


吉川 「必ず見ちゃうんだよ」


藤村 「あぁ。パンチラね」


吉川 「いや、君の個人的見解はともかくとして、そういう技」


藤村 「え~、でもパンチラは抵抗あるなぁ。ブルマー履いちゃだめ?」


吉川 「知らないよ! 別にパンチラじゃなくてもいいだろ」


藤村 「必ず何かすればいいんだよね? 例えば、必巻技とか」


吉川 「なにそれ?」


藤村 「必ず巻くんだよ」


吉川 「なにを?」


藤村 「……マフラー?」


吉川 「いや、聞かれても」


藤村 「じゃ、必食技」


吉川 「食べるのか」


藤村 「大食い大会とかで出す」


吉川 「へぇ……」


藤村 「必優技!」


吉川 「それはなにを?」


藤村 「なんか、優し~い気持ちになれる。なんかフワフワな感じ」


吉川 「いい技だな」


藤村 「必死技!」


吉川 「死ぬんだ」


藤村 「もう、すごい必死になるの」


吉川 「で、死ぬんだ」


藤村 「うぅ、死にたくねぇ。オラ、まだ生きてえだよ」


吉川 「じゃ、無理すんな」


藤村 「必泌技」


吉川 「なんだそれ」


藤村 「なんか分泌するの」


吉川 「字面で選んだでしょ?」


藤村 「うん……」


吉川 「必ずフェロモンを分泌する技っていうのはアリかも」


藤村 「必藤村!」


吉川 「なんだそれ。技でもなくなってる」


藤村 「必ず俺!」


吉川 「知ってるよ」


藤村 「どんな時も俺!」


吉川 「わかったよ」


藤村 「お前かな? あれ? あれってお前じゃね? っと思ったら俺!」


吉川 「しつこいな」


藤村 「すごい完璧なの考えついた」


吉川 「なに?」


藤村 「最後の大技」


吉川 「一応、技なんだ」


藤村 「必落技!」



暗転

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