アンケート
藤村 「すみませんアンケートに答えてもらっていいですか?」
吉川 「あ、はい。大丈夫といえば大丈夫ですけど」
藤村 「よかったー。簡単なアンケートなんでお時間はとらせませんから。ではまず最初に、アンケートに答えるのは好きですか?
①好き
②とても好き
③たまらないもう好きにして!」
吉川 「……その中から選ぶんですか? それがアンケート」
藤村 「はい。そうです」
吉川 「その中だったら、……①ですかね」
藤村 「わかりました。アンケートに答えるのが好きなようで。では、このアンケートをなんで知りましたか?
①生まれた時からずっと答えたいと思っていた。
②最近知ったが知ってからというもの他のことに手がつけられなかった。
③知らなかったけど運命は感じるので答えられて光栄」
吉川 「いや、今。あなたに声をかけられて知りましたよ」
藤村 「この選択肢の中では?」
吉川 「その選択肢の中でといわれれば、知らなかったってやつです」
藤村 「あー、③の知らなかったけど運命は感じるので答えられて光栄というわけですね。ありがとうございます」
吉川 「いや、運命感じてないよ。しょうがなく選んだだけで自分の気持ちに沿ってはいない」
藤村 「そうですか。では続いて政治に関するアンケートになります」
吉川 「あ、ちゃんとそういうのはあるんですね。よかった」
藤村 「政治に関するアンケートに答えるのは好きですか?
①好き
②とても好き
③たまらないもう好きにして!」
吉川 「そういうのじゃなかった。なにそれ? それを聞いてどうするつもりなの?」
藤村 「すみません、私はアンケートを取る係なんでそれがどう使われるかまではわからないんですよ」
吉川 「まぁそうか。あなたに文句言ってもしょうがないもんな」
藤村 「それで
①好き
②とても好き
③たまらないもう好きにして!
の中なら?」
吉川 「それもなんなんだよ。興味ないとか選べないの? だいたいたまらないもう好きにしてってどういう選択肢だよ。アンケートに対してそこまで身を委ねる人間怖いだろ逆に」
藤村 「結構選ばれる方もいますよ」
吉川 「いるの? というか、その回答は好きの延長線上でもない気がするけどな。じゃ、①で」
藤村 「政治に関するアンケートに答えるのは好き、と。ここまでアンケートに答えた方に質問です。アンケートに答えた時の気持ちはどうですか?」
吉川 「またそういうの聞くのかよ。なんか全然ちゃんと答えられた気がしないんだよ」
藤村 「①最低
②クズ
③ゴミ
④カス
⑤下衆の極み
⑥お粗末……」
吉川 「待って待って。今度はどうした? そんな卑下するような答えしかないの? 別にそこまでは嫌ってないよ」
藤村 「⑧悪質
⑨無駄
⑩極悪……」
吉川 「いいよわかったよ。だいたいそれ感触として全部同じようなものだから選べないでしょ。カスとお粗末はどう違うのよ」
藤村 「そのあたりは気分で選んでいただいて。まだあるんですけど
⑪下劣
⑫役立たず
⑬無用の長物……」
吉川 「わかった! 最低でいいです。最低です」
藤村 「最低を選ばれた方、どうすればお気持ちは晴れますか?
①爪の間に針を刺す
②膝の皿を割る
③側頭部にカンナをかける……」
吉川 「拷問! なんで!? それ選んじゃったらするってこと?」
藤村 「お気持ちが晴れるというのなら」
吉川 「そこまでじゃないよ! もう晴れてるよ。いいよ。全然大丈夫」
藤村 「もう晴れてると答えた方
①本当に晴れている
②本当は晴れてないけど可哀想だからそう答えてる
③本当は晴れてないし可哀想とも思わないけど罪悪感を感じたくないからそう答えている」
吉川 「人の心を覗き込むなよ! なんでそんな隠してる本心を暴こうとするんだよ。どんなアンケートだよ」
藤村 「この中で答えるなら?」
吉川 「罪悪感のやつ」
藤村 「③の本当は晴れてないし可哀想とも思わないけど罪悪感を感じたくないからそう答えている、ですね。では最後の質問です。この質問が本当に最後の質問だと思いますか?
①最後の質問だと思う。
②それはひっかけで最後の質問ではないと思う。
③たまらないもう好きにして!」
吉川 「クイズじゃん! もうアンケートじゃないでしょ、それは。あと③はなんなの? 今までの流れから逸脱して出てきたじゃん。なんとしてでも選ばせたい感じが出ちゃってるよ。③を選んだらどうなっちゃうんだよ」
藤村 「いかがですか? 10、9、8、7……」
吉川 「秒読みしてるの? アンケートなのになんで時間制限があるんだよ。焦られないでよ」
藤村 「5、4、3、2……」
吉川 「わかった。③で!」
藤村 「③のたまらないもう好きにして! ですね。アンケートは以上になります。ご協力ありがとうございました」
吉川 「……好きにしないのかよっ!」
暗転
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