十回クイズ

藤村 「十回クイズってあっただろう?」


吉川 「また、古い話題を」


藤村 「俺は、あれを進化させた」


吉川 「今更、進化するものでもないだろう」


藤村 「俺の手により、十回クイズは新たなるネクストステージへと足を踏み入れた」


吉川 「どうせあれじゃないの? 100回言ってとか、そんなのじゃないの?」


藤村 「アジャパー!」


吉川 「いや、意味がわからない。なに? 昭和のギャグ?」


藤村 「思わず懐かしい表現で驚いてしまった。ま、そんなところがお前の可愛いところだけど」


吉川 「なんだ気持ち悪いな」


藤村 「今までのスタンダードな十回クイズってのは、こうだ。ピザって十回言って」


吉川 「ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ」


藤村 「コピー&ペーストを使ったことは、この際、目を瞑ろう」


吉川 「いいじゃないか。そんなこと」


藤村 「で、ここは?」


吉川 「ヒジ」


藤村 「そう! それが今までの十回クイズ。つまりオールドタイプ十回クイズ。略してオールドタイプ十回クイ」


吉川 「ズだけ略すな。それなら全部言え」


藤村 「これから、新しい十回クイズをお目にかけよう、これは、人類の知性に対する挑戦でもあるザマス!」


吉川 「そうザマスか」


藤村 「その名も、一回クイズ」


吉川 「うわぁ。なんというか、コメントしづらい変化」


藤村 「これにより、九回分の発声エネルギーが節約される。人間が一日に十回クイズを三回やると計算して全世界的規模で考えると……」


吉川 「しない。三回もしない」


藤村 「まぁ、インドとか中国の辺りは、人口とか適当だからおよそ60億人としよう、そのエネルギーたるや、すごいものだ。エアコンの温度を2度上げても平気なくらい」


吉川 「どういう換算方法だか、皆目検討がつかないんが」


藤村 「世の中SDGsだからな。なんでも省エネの時代だ。スーツとか」


吉川 「スーツは省エネの時代を結局迎えなかったと思うが」


藤村 「じゃ、いくぞ。ピザって一回言って」


吉川 「ピザ」


藤村 「ここは?」


吉川 「ヒジ」


藤村 「やるじゃん! ここまでは、計算通りだ」


吉川 「まぁ、そうだわな」


藤村 「次、ピザって一回言って」


吉川 「ピザ」


藤村 「バナナと言えば?」


吉川 「ゴリラ」


藤村 「やるなぁ。賢い。賢いことでお馴染みのイルカよりも賢い!」


吉川 「褒められ感のない言い方だな。ゲームのシステムが違ってるだけじゃんか」


藤村 「次、ジュゲムって一回言って」


吉川 「寿限無、寿限無、五劫のすりきれ、海砂利水魚、水行末、雲行末、風行末食う寝るところに住むところ、やぶら小路ぶら小路、パイポ、パイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助」


藤村 「ここは?」


吉川 「ヒジ」


藤村 「さすが! 世界中のチンパンジーをギュッと濃縮したよりも賢い。これも計算通り」


吉川 「どういうこと? チンパンジーを濃縮するイメージが全く沸かない。実はジュゲムが言えるのがちょっとした自慢ではあるが」


藤村 「では次、般若心経一回言って」


吉川 「観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄 舎利子 色不異空 空不異色 色即是空 空即是色 受想行色亦復如是 舎利子 是諸法空相 不生不滅 不垢不浄 不増不減 是故空中 無色 無受相行識 無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法 無眼界 乃至無意識界 無無明 亦無無明尽 乃至無老死 亦無老死尽 無苦集滅道 無智亦無得 以無所得故 菩提薩 依般若波羅蜜多故 心無礙故 無有恐怖 遠離一切顛倒夢想 究竟涅槃 三世諸仏 依般若波羅蜜多故 得阿耨多羅三藐三菩提 故知般若波羅蜜多 是大神呪 是大明呪 是無上呪 是無等等呪 能除一切苦 真実不虚故 説般若波羅蜜多呪」


藤村 「ここは?」


吉川 「ヒジ」


藤村 「素晴らしい。やるなぁ。コピー&ペーストを使ったことは二回目だが目をつぶろう」


吉川 「目をつぶっていただいてかたじけない」


藤村 「むぅ……。一回クイズはやはりダメか」


吉川 「はっはっは。今回は、私の勝ちのようだな」


藤村 「本当にそう思うか?」


吉川 「なに?」


藤村 「笑点!」


吉川 「笑点?」


藤村 「違った。笑止! 一回クイズなど、ほんのオードブルにすぎない。言うなれば、シーザー風サラダみたいなもんだ」


吉川 「随分ボリューム満点のシーザー風サラダだったなぁ」


藤村 「これからが、本当のメインディッス!」


吉川 「なんか、体育会系みたいなメインディッシュだな」


藤村 「十回クイズの新しい進化系、そう、それは……0回クイズ!」


吉川 「うー。まるでピンとこない」


藤村 「この恐怖に世界が震撼するだろう」


吉川 「たかが、クイズに震撼しない」


藤村 「いくぞ。ヒジと言わないで!」


吉川 「……」


藤村 「ここは?」


吉川 「……」


藤村 「ここは!?」


吉川 「……」


藤村 「ここはっ!?」


吉川 「……エルボー」


藤村 「英語!? そんなに賢いことある? 天才なの?」


吉川 「さっきから不自然に褒め過ぎじゃない?」


藤村 「これが俗に言うアジャパーのエルボー」


吉川 「あばたもエクボ」



暗転

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