スターの

藤村 「俺はフォースを身に付けた」


吉川 「フォース?」


藤村 「フフフ。実は昨日、TVでスター・ウォーズを見たのだ」


吉川 「へぇ。ものすごいのんびりとはまってるな」


藤村 「すごかったよ。なんつーんだろ、あの頃はCGって言わなかったな」


吉川 「SFXって言ってたね」


藤村 「それがすごかった。昔の映画なのに」


吉川 「どれを見たの?」


藤村 「一番最初のやつ。1だな」


吉川 「いや、それは4だ」


藤村 「おっしゃってる意味がわからない」


吉川 「だから、4が一番最初なの」


藤村 「あれか? ひょっとして、俺はフォースの力で未来の映画を見てたのか?」


吉川 「いや、お前は全然フォースの力を使ってなくて、なんというかね、4から始まって、5、6、と続いて、1、2、3が作られた」


藤村 「つまりなんだ? ロッキーで言うところのロシア人と戦うところから始まったのか?」


吉川 「ロッキーで言うと、もう全然わけわからなくなっちゃうけど、それだけ物語が壮大なんだよ」


藤村 「あれか。ようするに1が4なのか?」


吉川 「そうそう。1が4なの」


藤村 「それはあれだな? 叔母さんは、俺にとっては叔母さんだけど、おじいちゃんにとっては娘みたいなもんか?」


吉川 「いや、全然違うと思う」


藤村 「要するにアレだろ? バカボンのパパがバカボンが生まれる前からバカボンのパパだったみたいなもんだろ?」


吉川 「うーん。ちょっと近いかな」


藤村 「4がバカボンなのか。それで1がバカボンのパパ」


吉川 「お前の例えを聞いてると、こっちまでわからなくなる」


藤村 「で、2がハジメちゃんで、3が……イヤミ?」


吉川 「いや、イヤミはおそ松くんだから。バカボンにでてこない」


藤村 「じゃ、3は誰だよ」


吉川 「知らないよ。ウナギイヌあたりじゃないの?」


藤村 「ウナギイヌ好きなんだよね。3も楽しみだなぁ」


吉川 「ウナギイヌじゃないけどね」


藤村 「お前、自分でウナギイヌって言ったじゃないか! 責任持てよ」


吉川 「エピソード3をウナギイヌって思ってる人は多分世界中にお前しかいない」


藤村 「まぁ、でもだいたいわかったよ。色々シリーズがあるわけだ。それで過去の話が作られたってことだ」


吉川 「そうそう」


藤村 「つまり、インディージョーンズがヒットしたからインディージョーンズの若い頃の冒険が作られたみたいなもんだな」


吉川 「うん。感じとしてはそれでいいと思う」


藤村 「フォースのおかげでわかったよ」


吉川 「いや、お前にフォースはないだろ」


藤村 「フォースってのはアレだろ? なんか色々できる便利な力だろ?」


吉川 「うん。まぁ、そうだな」


藤村 「スプーン曲げたり」


吉川 「多分できるだろうけど、そんな使い方する人はあんまりいない」


藤村 「耳がでっかくなっちゃったり」


吉川 「それは手品だな」


藤村 「だいたいわかった」


吉川 「多分、わかってないと思うけど」


藤村 「なんかね。俺は前々からフォースがあるような気がしてたんだよ」


吉川 「どこからその無根拠な自信が出てくるんだ」


藤村 「耳がでっかくなったり」


吉川 「それは間違いなくフォースじゃない」


藤村 「ダースベーダーのコーホーっていうモノマネができる」


吉川 「それもただのモノマネだ」


藤村 「ダースベーダーとウォーズマンの会話という新しいジャンルのモノマネまで考えた」


吉川 「絶対、すでに誰かがやってそうだな」


藤村 「ダースベーダーとウォーズマンが深海でアクアラングをつけて対決するという一味違うモノマネも開発した」


吉川 「ベースが何一つ変わってないもの」


藤村 「ついでに声が遅れてくる」


吉川 「それは腹話術だな」


藤村 「フォースの力でできるようになった」


吉川 「フォースはそんな宴会芸みたいなものじゃない」


藤村 「しかし、スターウォーズはすごかったよ」


吉川 「まぁ確かにすごいな」


藤村 「俺なんか、アレを見たせいで宇宙が本当にあるような気がしてたもん」


吉川 「いや、宇宙は実在するよ。なんだお前は、原始人か?」


藤村 「まぁ、確かに宇宙は存在するよな。俺たちの心の中に……」


吉川 「いや、普通に存在するよ。なにそんなポエティックにして万事解決しようとしてるんだ」


藤村 「じゃ、なにかい? スター・ウォーズは実話?」


吉川 「実話じゃないよ。あれは映画だけど」


藤村 「ほら、映画じゃん。俺を担ごうとしたって無駄無駄」


吉川 「だから、スターがウォーズするのは映画だけど、宇宙はあるでしょ」


藤村 「じゃ、百歩譲って宇宙はあるとしよう」


吉川 「一歩も譲られなくても宇宙はあるけどな」


藤村 「スターがウォーズするか?」


吉川 「いや、それは映画」


藤村 「ほらー。映画じゃん」


吉川 「宇宙はあるんだよ。で、ウォーズは映画。宇宙人も映画。フォースも映画」


藤村 「フォースまで映画だったとは……」


吉川 「夢を壊してごめんな」


藤村 「まぁ、俺も薄々は感づいていたさ」


吉川 「とりあえず、続きのスター・ウォーズでも見よう」


藤村 「そうだね。サードの力を見ないと」


吉川 「なにそれ?」


藤村 「3はアレだろ? サードの力。ウナギイヌのやつ」


吉川 「いや、フォースって4って意味じゃないから。そんなシリーズごとに区分けされてる力じゃないもん」


藤村 「そうなの?」


吉川 「1でも2でもフォースはフォースだよ」


藤村 「なんかちょっと裏切られた気分」


吉川 「でもほら、今日は一つ勉強になったじゃない。宇宙は実在するって」


藤村 「そうだな。宇宙かぁ……遠いなぁ」


吉川 「遠いよ」


藤村 「一度でいいから行って見たいな」


吉川 「そのうち行けるさ、近い将来」


藤村 「そうだな」


吉川 「スター・ウォーズの続き楽しみだな?」


藤村 「いや、やめとくよ」


吉川 「なんで?」


藤村 「ちょっと遠いじゃん」


吉川 「……う、うん」



暗転

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