手相見

藤村 「手相見てやるよ」


吉川 「あ、見れるの?」


藤村 「お前は、俺の視力をなめてるな?」


吉川 「いや、視力じゃなくて、そういう意味で見れないとは思わないけど」


藤村 「まぁ、いいから手を貸しなさい」


吉川 「はい」


藤村 「おぉ! こりゃ、いいよ!」


吉川 「本当?」


藤村 「うん。相当いい。すげーいい匂い」


吉川 「匂いかよ」


藤村 「なにこれ。何で洗ってるの? 石鹸?」


吉川 「いや、ハンドソープだけど」


藤村 「ははーん。なるほどね。そういう相がでてるわ」


吉川 「どういう相だよ」


藤村 「まぁ、手相って言っても色々あるからね。だいたい、左右の手のうち、左の手は私生活を表すんだよ」


吉川 「へぇ。右手は?」


藤村 「いや、右のことはいいじゃないか」


吉川 「なんでひた隠しにしてるんだ」


藤村 「右手のことには触れないでいてあげてくれよ」


吉川 「そんなまずいことだったのか」


藤村 「すまない。今は……言えない」


吉川 「そんな深刻になられても」


藤村 「その代わりと言ってはなんだが、左足を教えよう」


吉川 「左足なんてあるんだ」


藤村 「左足とは、この足のことだ」


吉川 「いや、それは知ってるよ」


藤村 「さすがに知ってたか」


吉川 「そのくらい、誰だってさすがに知ってる」


藤村 「じゃ、そろそろ本格的に手相を見ようかな」


吉川 「頼むよ」


藤村 「あっ!? これは……」


吉川 「なに? どうしたの?」


藤村 「すごい相がでてる。しかもくっきりはっきり」


吉川 「なんなの? いいの? 悪いの?」


藤村 「悪いっちゃー悪いけど、いいと言えば……悪いな」


吉川 「悪いんじゃないか」


藤村 「でも悲観することはない。手相って言うのはね。日々変化していくもんなの」


吉川 「どんな相が出てるんだよ」


藤村 「知りたいか? どうしても知りたいか? ひょっとしたらもう帰ってこれなくなるかもしれないぞ」


吉川 「どこからだ」


藤村 「おそらく……29歳くらいの時に、ひどい詐欺にひっかかる」


吉川 「まじでー!? 今年じゃない!」


藤村 「これはもう、防ぎようがない。あきらめた方がいい」


吉川 「そうなのか」


藤村 「さ、見料として1000万円いただきます」


吉川 「ひどい詐欺だ!」



暗転

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