締め切り
吉川 「先生! 急がないと締め切りが!」
藤村 「締め切り? そんなもん待たせておけ」
吉川 「いや、もう、十分待ってます。時間いっぱいです」
藤村 「今日はなんか筆が進まないのー」
吉川 「そんなこと言わずに、お願いしますよ」
藤村 「吉川くん考えてみたまえ、この宇宙の広大さに比べて、締め切りに追われている我々のなんとちっぽけなことか」
吉川 「締め切りはちっともちっぽけじゃないですよ」
藤村 「じゃ、なにか? 俺が締め切りを破ったとして、宇宙が爆発するのか?」
吉川 「ええ」
藤村 「まじでー!? 宇宙、俺にかかってたの?」
吉川 「そうです。だから早く書いてください」
藤村 「そんな、宇宙のピンチだとは気がつかなかったよ」
吉川 「嘘ですけど」
藤村 「なんだよぉ。嘘かよぉ。あせったー。まじあせった」
吉川 「でも、締め切りは守ってください」
藤村 「君は口を開けば、締め切り締め切りって、締め切り星人か」
吉川 「いえ、締め切り星人ではありません」
藤村 「そうだよなぁ、締め切り星人はもっと全体的に小柄だもんな」
吉川 「いや、そんな星人はいないでしょ」
藤村 「締め切り星人をなめるな! 締め切り光線でビビビーってやられるぞ」
吉川 「わかりました。締め切り星人はいますから、早く書いてください」
藤村 「ところで、吉川くんはなに星人なの?」
吉川 「なに星人でもありませんよ。地球人ですよ」
藤村 「嘘だぁ。そんな地球人あんまりいないよ。地球人にしてはちょっと……眉毛が細い」
吉川 「整えてるんです!」
藤村 「じゃさ、じゃ、一回、あれやって。ワレワレハってやつ」
吉川 「ワレワレハ……」
藤村 「似てねー! まじ似てねー」
吉川 「誰に似てるんですか!? オリジナルは誰なんですか」
藤村 「吉川くんは、なんで地球にきたの? 侵略?」
吉川 「先生の締め切りを守りにきました」
藤村 「まじでー! それ大変じゃん!」
吉川 「だから大変なんですよ。印刷所も待ってるんですよ」
藤村 「結局、吉川くんは、なに星人なの?」
吉川 「あーもう! 締め切り星人です。ワレワレハ締め切り星人ダ」
藤村 「やっぱ! やっぱそうじゃん! 俺ピンときたもん」
吉川 「守らないと締め切り光線をビビビーとするぞ」
藤村 「うひゃぁ。それは困る。じゃ、頑張るからさ、手伝ってよ」
吉川 「それは無理です」
藤村 「えー。なんでだよぉ」
吉川 「ワレワレハ締め切りを守らせるために地球に来たんだ」
藤村 「じゃ、手伝ってよ」
吉川 「カセイに来たわけじゃない」
暗転
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