自白

吉川 「俺をどうしようと言うんだ」


藤村 「なぁに、ちょっと秘密を吐いてもらうだけさ」


吉川 「誰がお前なんかに……」


藤村 「ほぉ、妻と娘になにがあってもいいというのか?」


吉川 「なんだとっ!?」


藤村 「これを見ろ」


吉川 「それは……」


藤村 「妻と娘の写真だよ」


吉川 「え、ちが、……誰?」


藤村 「俺の」


吉川 「お前のかよ! 知らないよ、そんな妻と娘は」


藤村 「どうなってもいいのか?」


吉川 「俺の知ったこっちゃない」


藤村 「ディズニーランドとか連れてっちゃうぞ」


吉川 「勝手に行けよ」


藤村 「あくまで歯向かうつもりか。ならば仕方ない。この写真を見てもそういえるかな?」


吉川 「なっ!? それは!」


藤村 「なつかしの日本の風景写真集だ」


吉川 「……で?」


藤村 「これがまた、癒されるんだわ」


吉川 「そ、そうですか」


藤村 「忘れていた大切なものを取り戻せる、みたいなね」


吉川 「いや、しかし。それがなにか?」


藤村 「そろそろ吐く気になったか?」


吉川 「なんでだ!」


藤村 「お前の心はまだまだ汚れているようだな」


吉川 「畜生、いやなこと言いやがって」


藤村 「なかなか強情だな。仕方ない、これだけは使うまいと思っていたのだが……」


吉川 「なんだ!」


藤村 「この薬、なんだかわかるか?」


吉川 「貴様! 卑怯だぞ」


藤村 「卑怯? いい言葉だ。賛辞として受け取っておこう」


吉川 「なんてやつだ」


藤村 「この薬を飲むとなぁ……」


吉川 「くっ! やめろ!」


藤村 「お肌がツヤツヤになるんだ」


吉川 「お、お肌が?」


藤村 「そうだ。コラーゲンたっぷりだ」


吉川 「そんな薬なのか」


藤村 「ネット通販で買った」


吉川 「ものすごくどうでもいい」


藤村 「十代のお肌になれるそうだぞ」


吉川 「ちょ、ちょっとだけ興味はあるが……なぜその薬を」


藤村 「飲みたいだろ? 飲みたければ秘密を吐け!」


吉川 「そんな甘言にのってたまるか!」


藤村 「ならば仕方ない。この薬は俺が飲もう」


吉川 「勝手にしろ」


藤村 「俺のお肌がツヤツヤになっても恨むなよ」


吉川 「別にそんなことでは恨まないし、多分、それインチキっぽいぞ」


藤村 「俺のお肌がどうなってもいいのか?」


吉川 「はっきり言って、いい」


藤村 「強情なやつめ……吉川くん、君の事はすべて調べさせてもらったよ」


吉川 「なんだと!?」


藤村 「洗いざらいすべてな」


吉川 「なんてやつだ……」


藤村 「もはや君の口から秘密を聞き出すまでもなくなったよ」


吉川 「下衆め!」


藤村 「どうだ? 最後のチャンスだ、秘密を吐きたまえ」


吉川 「誰がっ!」


藤村 「ならば仕方あるまい。これだけは言いたくなかったが、言わせて貰おう」


吉川 「くそっ!」


藤村 「意外と着やせするタイプなんだね」


吉川 「うう……」


藤村 「君の身長は173cm、体重は57kgだ」


吉川 「貴様……はかったな!?」


藤村 「あぁ、計らせてもらった」



暗転

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