罰ゲーム

吉川 「じゃ、まず罰ゲームを決めないとな」


藤村 「罰ゲームか。こう言っちゃなんだけど、俺は罰ゲームに関しては一家言持ってる男だよ」


吉川 「しょうもないものを持ってる男だな」


藤村 「中国の格言にこういうのがある」


吉川 「どんなの?」


藤村 「罰ゲームを舐めちゃダメアルヨー」


吉川 「ずいぶんライトな格言だな」


藤村 「秦の始皇帝の言葉だ」


吉川 「嘘つけ」


藤村 「嘘じゃないアルヨ」


吉川 「アルヨは言ってない」


藤村 「多少、面白おかしく脚色した」


吉川 「全部脚色だろ」


藤村 「ともかく、罰ゲームと言っても色々とあるんだよ」


吉川 「例えば?」


藤村 「主に、フィジカル系とメンタル系に別れるんだ」


吉川 「なるほど」


藤村 「フィジカル系だと、例えば……死ぬとか」


吉川 「いやいや、死んじゃダメでしょ。ゲームじゃなくなっちゃうじゃん」


藤村 「そおかぁ? 昔の人は結構ノリで死んでたんだぞ」


吉川 「そんなノリいやだ」


藤村 「死ぬのがダメとなると、ずいぶん限られてきちゃうな」


吉川 「死ぬのばっかりかよ」


藤村 「逆に死なないってのがあるな」


吉川 「え?」


藤村 「全然死なないの。もう管とか機械とかで無理やり延命させられるの」


吉川 「それもやだよ」


藤村 「ラスプーチンとか、いい例だな」


吉川 「ロシアの怪僧! あれ、罰ゲームだったの?」


藤村 「ある意味ね」


吉川 「やな意味だな」


藤村 「あとは、比較的軽いやつになる」


吉川 「あ、そっちでお願いします」


藤村 「眼球摘出とか」


吉川 「ぎゃー! めちゃめちゃヘビーじゃんか」


藤村 「取り出して、目薬さして元に戻すの」


吉川 「そういうのじゃなくて。もっとさ、あるじゃん? 洗濯バサミを使ったとか」


藤村 「あー。洗濯バサミで小腸をつまむ」


吉川 「小腸!? なんで、そんなオペが必要な罰ゲーム受けなきゃいけないんだ」


藤村 「あ、オペはお嫌い?」


吉川 「好き嫌いの問題じゃないだろ」


藤村 「じゃ、洗濯バサミを肛門から挿入」


吉川 「痛い痛い。過激すぎるよ。もっとやわらかいやつで頼む」


藤村 「やわらかい洗濯バサミを肛門から……」


吉川 「肛門はいいから。肛門から離れよう。ついでに洗濯バサミからも離れよう」


藤村 「自分から言い出したくせに」


吉川 「そうだけどさぁ。ちょっとひどすぎるんだもん」


藤村 「ひどいくらいじゃないと罰ゲームにならないだろ」


吉川 「あ、あれだ。メンタルなやつにしよう」


藤村 「メンタルなやつかぁ。とりあえず、思いつくのは……死ぬ」


吉川 「またかよ!」


藤村 「フィジカルもメンタルも併せ持つ最高の罰ゲームだからね」


吉川 「死なないやつ。生き死にとあんまりかかわらない程度のやつ」


藤村 「おいおい、ずいぶんランク下げちゃうなぁ。大丈夫か?」


吉川 「下げちゃってよ。もう、どんどん下げちゃって」


藤村 「じゃ、メンタルなやつで、ゴキブリ……」


吉川 「うわぁ。気持ち悪い。そういうやつだ」


藤村 「のものまねを披露する」


吉川 「なんだよそれ。どこが罰なんだ。ちょっと楽しげじゃないか」


藤村 「お前がランク下げろっていうからゴキ」


吉川 「なんだ、その語尾は? 真似か? 真似してるのか?」


藤村 「思わずしてしまったゴキ」


吉川 「そうじゃなくてさ、もっと精神的に追い詰められるやつ」


藤村 「力士10人とサウナに入る」


吉川 「それはいやだー。なんか色々な意味で追い詰められてる」


藤村 「あとは、ヘビーなやつしかないよ」


吉川 「どんなの?」


藤村 「お前と会話するとか」


吉川 「え……」


藤村 「これはきつすぎか」


吉川 「いや、あの……罰?」


藤村 「普通の人には耐えられない」


吉川 「あぁ、そう。そうなんだ」


藤村 「うん」


吉川 「なんか……ごめんね」


藤村 「どんまいどんまい」


吉川 「俺……もういいや。罰ゲーム」


藤村 「どうしたんだ急に?」


吉川 「いや、気分的に、すごい罰ゲーム受けたみたいな感じになっちゃった」


藤村 「……という罰ゲーム」


吉川 「なんだよぉ! びっくりしたよ。いやぁ、ひっかかった。これが罰ゲームだったのか」


藤村 「あ、お前と話するってのは本当に嫌だけどね」


吉川 「あ、そ……」



暗転

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