ひな祭り

吉川 「ひな祭りだね」


藤村 「おう! 祭りだ! いやっほぅ」


吉川 「いや、そういうノリじゃないと思うけど」


藤村 「喧嘩と祭りはお江戸の華だぜ」


吉川 「もっとさ、おしとやかな感じじゃない? 桃の節句というくらいだから」


藤村 「エッチ!」


吉川 「なんでだ! どこにもエッチなこと言ってないよ」


藤村 「その言い訳は聞けません。桃といえばほとんどの人はエッチなことを思い浮かべるし、セックといえばほぼすべての人がエッチなことを思い浮かべますから」


吉川 「断言するなよ。そんなこと思いもよらなかった」


藤村 「ほほぉ。お前は自分がエッチじゃないと言い張れるのか?」


吉川 「いや、追求されると、人並みにエッチかもしれないけど」


藤村 「ほぉら。エッチだ。このエッチ小僧」


吉川 「エッチ小僧呼ばわりされる覚えはない」


藤村 「エッチ准教授」


吉川 「教授ではないんだ。別に准教授でもないけど。お前はどうなんだよ?」


藤村 「俺はエッチとは無縁の生活をしている」


吉川 「そんな仙人みたいな」


藤村 「そもそもエッチなんてものはな、若さからくる行き場のない欲望なのだよ」


吉川 「俺はそんなに若くないけど」


藤村 「わしに比べたらまだまだひよっ子よ」


吉川 「急に一人称も変わった。一体いくつなんだ」


藤村 「もう、年とかそういう概念から超越した存在」


吉川 「えー、いつの間に超越しちゃったんだ」


藤村 「一昨日」


吉川 「超越したてのほやほやじゃないか」


藤村 「ほやほやだろうが、なんだろうが、もう超越しちゃったんだからしょうがない」


吉川 「しかし、ひな祭りなのになんだ? この女っ気のなさは」


藤村 「そこがお前のエッチなところだ」


吉川 「う……」


藤村 「このエッチングめ」


吉川 「現在進行形にされた」


藤村 「女なんてものはな、心の持ちようだ」


吉川 「いや、心の持ちようじゃないでしょ。女は女だよ」


藤村 「わしなんぞ、性別を超越した存在」


吉川 「そこも超越しちゃったのか」


藤村 「昨日ね」


吉川 「最近超越してばっかりだな」


藤村 「なんか超越ブームみたいのがきた」


吉川 「へー。それで、なにかいいことあった?」


藤村 「なにが?」


吉川 「なにって、超越してさ」


藤村 「もう、いいことだらけだよ。ご飯は美味しいし」


吉川 「その程度か」


藤村 「バカ! もう、味覚とかを超越した美味しさ」


吉川 「味覚を超越したら美味しいかわからないじゃん」


藤村 「なんだお前は。いちゃもん准教授か」


吉川 「だから准教授になった覚えはない」


藤村 「いいんだよ。この超越した感は言葉にはできない。いや、言葉を超越した感覚だ」


吉川 「へー」


藤村 「それも超越した。へーを超越した感じ」


吉川 「ふーん」


藤村 「ふーんも超越した。もうふーんどころじゃない」


吉川 「なんでも超越しちゃうんだな」


藤村 「今日から俺のことを超越ッチと呼んでくれ」


吉川 「超エッチ!」



暗転

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