手相

藤村 「手相を見てあげよう」


吉川 「そんなの見れるんだ?」


藤村 「紀元前から伝わる由緒ある鑑定方法をネットで見て覚えた」


吉川 「最後の一言で最初のいいところ全部ぶち壊したな」


藤村 「あ、これはすごい。ほら、この線。すごく長いでしょ」


吉川 「長いの? 他人と見比べたことないからわからない」


藤村 「じゃ、俺のと比べてみて。全然でしょ」


吉川 「たしかに長い。へぇ、これっていいんだ?」


藤村 「これはバカ線」


吉川 「バカ線!」


藤村 「これが長いとバカ」


吉川 「聞いたことないし、それは悪口じゃ?」


藤村 「由緒正しいやつだから。あのロシアのイワンも長かった」


吉川 「イワンのバカの!」


藤村 「あー、こっちの線は短いな。でもそれほど気にすることない」


吉川 「なにの線なの?」


藤村 「これはお腹いっぱい線。お腹がいっぱいだと長くなる」


吉川 「ものすごいフレキシブルに変化しない?」


藤村 「短くなってきたなーと思ったら食べるといいよ」


吉川 「パラメーター的な見方をするんだ」


藤村 「あとこの線。見て、ちょっと途切れ途切れのやつ」


吉川 「確かに途切れてる」


藤村 「これは谷折りの線」


吉川 「手相じゃないの?」


藤村 「谷折り」


吉川 「そもそもが手相ってだいたい谷折りの線じゃない?」


藤村 「あとほらここ、蚊に刺されてる」


吉川 「あ、うん。それは何も習ってない俺でもわかる」


藤村 「9月中は痒くなる可能性が高いから注意して」


吉川 「占っぽく言うなぁ。全然占いじゃないのに」


藤村 「あとここがツボ」


吉川 「痛い!」


藤村 「ここが痛い人は前頭葉が悪くなってるから注意」


吉川 「内臓じゃないの? 脳? 脳の痛みをどう注意するの?」


藤村 「この線が寿司線」


吉川 「寿司線。なにを司る線なんだ」


藤村 「結構長いね。ということは寿司が好きだな?」


吉川 「好み!? 手相で見るようなこと?」


藤村 「俺のもほら。長い。このハンバーガー線も結構長いんだよ」


吉川 「紀元前から伝わってるやつにハンバーガー線があるの?」


藤村 「それはほら、占いだから。未来を予知するやつだから」


吉川 「いつかこの世にハンバーガーという食べ物が現れて、それの好みを示すことになるって伝わってるの。そんなわけないだろ」


藤村 「間違いないんだよ。だって俺はハンバーガー好きだもん。ほら、お前も長いし好きだろ?」


吉川 「そんなに嫌いなやついないだろ。全般的に好感度高いよハンバーガーは」


藤村 「当たってるんだから文句言うなよ」


吉川 「言うよ。最初から全然信憑性ないんだよ。バカ線とか失礼だし」


藤村 「でも俺のこの線みてよ。すごい長いだろ」


吉川 「長い。これは長いな。あんまりこの手の感じみたことない。これは何線?」


藤村 「これは手相線」


吉川 「じゃ、信じるわ」



暗転

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