男は

吉川 「男は顔じゃない。っていうじゃない?」


藤村 「言うね」


吉川 「でも、結局顔だよなぁ……」


藤村 「馬鹿野郎! そんなことでどうするんだよ!」


吉川 「いや、俺はいつもこんな調子だけど」


藤村 「お前がそんな弱気で、地球の平和はどうなるんだ」


吉川 「え……。地球の平和に関与したことはいまだかつてないんだけど」


藤村 「男は顔じゃないぞ」


吉川 「でもさぁ、なんだかんだ言って……」


藤村 「なんだかんだ言うな! 男はな……男は……」


吉川 「なに?」


藤村 「男は……メガネ?」


吉川 「いやいや、そんな自信なさげに言われても」


藤村 「男はメガネです。きっとそうなんです」


吉川 「意味がわからないんだけど。なに? メガネって」


藤村 「メガネっていうのは、耳にかけて鼻のところにささえて」


吉川 「メガネの説明はいいよ。それはわかってるよ」


藤村 「じゃぁ、いいじゃないか」


吉川 「よくないよ! なんだよ、男はメガネって」


藤村 「ほら、よく言うじゃないか。メガネは心の窓だって」


吉川 「言わないよ。初めて聞いたよ」


藤村 「俺も初めて言ったよ。意外と名言が言えたので満足」


吉川 「いや、別に名言じゃないし、勝手に満足されても」


藤村 「つまり、男はメガネなんだよ」


吉川 「その結論がまるで納得いかないんですけど。メガネかけてる女の人は?」


藤村 「それは学術的に言えば男だ」


吉川 「いやいや、失礼でしょ」


藤村 「さすがに、男はメガネ論は、無理が生じてきたような気がする」


吉川 「いや、最初から無理無理でしたけど」


藤村 「だいたい、お前が男はなんだかんだ言うからいけないんだよ!」


吉川 「うわぁ、逆切れした。たち悪い」


藤村 「どうしたんだよ。男は顔だとか急に」


吉川 「いや、だってさ、モテたいじゃん?」


藤村 「お前はさかりのついたメス豚か!」


吉川 「いや、一応オスですけど」


藤村 「やっぱりな、俺もそうじゃないかとにらんでた」


吉川 「にらまないでもそこはわかって欲しかった」


藤村 「男は、ハートだよ」


吉川 「うわぁ。でたでた。月並みな台詞が」


藤村 「クルックー」


吉川 「それは鳩だね」


藤村 「今日、二回目の名言だな」


吉川 「え? 今のが名言だったのか。まるで気が付かなかった」


藤村 「今年の流行語になるかもしれない」


吉川 「絶対ならないと思う」


藤村 「男と言う字はな、田んぼに力って書くと思ってるだろ」


吉川 「うん。そうでしょ?」


藤村 「それが早計。男と言うのは甲に刀と書くんだ!」


吉川 「えー」


藤村 「異議は認めません」


吉川 「で、その心は?」


藤村 「いいか? 男と言うのはな、常に刀を……甲羅に隠し持ってる」


吉川 「なんだよ! 甲羅って」


藤村 「甲羅と言うのは、背中に背負ってるやつだよ」


吉川 「そんなもの背負ってない!」


藤村 「ある意味、甲羅ってことだよ。心の甲羅」


吉川 「そんな心やだあぁ」


藤村 「つまり……男は亀という結論に至った」


吉川 「勝手に至らないでくれ」


藤村 「まぁ、これ以上詳しく言うとシモネタに……」


吉川 「うわぁ、最悪の結論だ」



暗転

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