四千年の味

藤村 「イラシャイーアルヨー」


吉川 「ラーメン一つ」


藤村 「お客さんー、なめちゃ困るアルヨ。ここはラーメン屋よ。ラーメンはイパイアルアルヨー」


吉川 「あ、何ラーメンがあるんですか?」


藤村 「塩ラーメン、味噌ラーメン、醤油ラーメンにスパ王ときつねどん兵衛アルヨ」


吉川 「最後の方は明らかにカップ麺じゃないですか!」


藤村 「お客さんー、因縁はいけないアルネ、最初の方もしっかりとカップ麺アルヨ」


吉川 「全部カップ麺じゃないですか! いやですよ。帰ります」


藤村 「困るアルネー。テーブルチャージ料が発生したあるよ」


吉川 「なんだこの店は! ボッタクリか!」


藤村 「いいがかりはいけないアルネー、コレは本場のやり方アルネ」


吉川 「本当かよぉ……。じゃ、醤油ラーメン」


藤村 「アイヤー! 醤油はさっきオワタアルヨ」


吉川 「なんなんだ、じゃ、なにがあるんだ」


藤村 「今なら、スパ王が旬アルネー」


吉川 「なんだ、旬て! しかも、何が悲しくてラーメン屋に来てスパ王食べなきゃいけないんだ」


藤村 「腕を振るうアルヨー!」


吉川 「一体全体、なにをはりきっちゃってるんだ」


藤村 「スパ王でいいアルカ?」


吉川 「あぁ……もういいですよ、それで」


藤村 「アイヨー! スパ王イッチョアルヨー!」


吉川 「誰にむかって言ってるんだ……一人しかいないのに」


藤村 「アイアイサー!」


吉川 「自分で返事か……しかも、アイアイサーは英語だろ……」


藤村 「良く見るアルヨ! 今、ダシをとってるフリしてるアル!」


吉川 「いや、フリかよ、そんなのどうでもいいよ」


藤村 「キェェェェ! 本場の……アツッ! 火傷したアルー!」


吉川 「なんだよ、最悪だなぁ」


藤村 「お客さんー、どうしてくれるアル!」


吉川 「何を詰め寄ってるんだ」


藤村 「ワタチの大事な指が火傷したアル。ヒリヒリアルヨ」


吉川 「知らねーよ」


藤村 「アイヤー! しらを切るとは四千年の歴史もビックリアルヨ」


吉川 「その程度でビックリしちゃうのか、四千年は」


藤村 「まぁ、今回の件は、ワタチの胸の中にそっとしまっておくアルネ」


吉川 「……というか、気になってたんだが。ここのお店の名前」


藤村 「なかよし食堂アルヨ」


吉川 「本場感がまったくない!」


藤村 「アイヤ! これはワタチのアイデンティティーがズタズタあるね!」


吉川 「だって、なかよしって」


藤村 「なかよしはワタチの故郷を流れる川の名前アルヨ」


吉川 「本当かよ」


藤村 「本当アルヨ! 信じないアルカ?」


吉川 「だって、カップ麺だし」


藤村 「そこまで言うなら仕方ない、本物のラーメン作るアルヨ!」


吉川 「あるのかよ! だったら最初から」


藤村 「お客さんを試したアルヨ。本物がわからない人にはうちのラーメンは出せないアル」


吉川 「試されてたのか」


藤村 「お客さんは合格あるよ。本場では合格の証にラーメン送るアルネ」


吉川 「なんだか、すべてのエピソードが嘘っぽいなぁ」


藤村 「今から、四千年の技、すべて注ぎ込むアルヨー!」


吉川 「最初からそうしてくれよ」


藤村 「ということで、このスパ王はワタチがいただくあるね」


吉川 「食うのかよ」


藤村 「美味いアルネー。四千年の歴史を感じるアルネー」


吉川 「待て待て待て、スパ王だろうが」


藤村 「おなかもいっぱいになったところで、いよいよ四千年の腕を披露するネー!」


吉川 「なんでもいいから、早くしてくれ」


藤村 「ホイィィィィィ! 四千年の秘儀! スーパー麺茹でー!」


吉川 「スーパーって英語じゃねーか」


藤村 「ウルトラ、アクロバティック、お湯切りー!」


吉川 「アクロバティックしなくていいから、普通にやりなさい」


藤村 「こう見えても、雑技団を見たことアルアルヨ」


吉川 「見ただけかよ」


藤村 「見よう見真似アルヨ」


吉川 「見よう見真似でアクロバティックするなよ。危ないなー」


藤村 「いよいよ完成するアルヨ~!」


吉川 「お、なんかそれなりに美味そうだなぁ」


藤村 「ホイ! 四千年の味、本場の札幌ラーメン」


吉川 「札幌なのかよ」



暗転

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