青春マン

吉川   「助けてー」


青春マン 「とうっ! いつでも青いぜ青春マン参上!」


吉川   「わぁ、ちょっと暑苦しいのが来た」


青春マン 「熱く燃え滾ってるかー!?」


吉川   「いや、あんまり」


青春マン 「そんなことでどうする。いくぞー!」


吉川   「え……」


青春マン 「アン、デュ、トロワ、ワッフル! ワッフル!」


吉川   「乗りづれぇ。しかもあからさまなパクリだ」


青春マン 「青春とは、決して後ろを振り返らないことだ!」


吉川   「へ、へぇ」


青春マン 「だから俺の車のバンパーはベコベコだ!」


吉川   「軽く事故ってるじゃないの」


青春マン 「常に前だけを見てワッフル! ワッフル! だ」


吉川   「いや、そのワッフルの掛け声がピンと来ない。美味しそうなだけで」


青春マン 「マックスの方がよかったかな?」


吉川   「いや、私に聞かれても」


青春マン 「そんな無関心なことでどうする! 常に物事に関心を持て。私の嬉し恥ずかしプライベートライフとか」


吉川   「そんなもんに関心持ちたくないですよ。なにが嬉し恥ずかしだ」


青春マン 「じゃ、悲したくましプライベートライフを」


吉川   「もう、冠がなにをアピールしたいのか見失ってる気がする」


青春マン 「つまり青春とは、時に見失い、時に模索し、時にわがままピーチパイ」


吉川   「自分で言ってて笑いませんか?」


青春マン 「それが青春というものだよ」


吉川   「いや、わがままピーチパイは青春じゃないと思いますけど」


青春マン 「いくぞー!」


吉川   「いや、人の話を聞いて……」


青春マン 「アン、デュ、トロワ、ハンクス! ハンクス!」


吉川   「ハンクスって……」


青春マン 「トム・ハンクスのことだ」


吉川   「なんでトム・ハンクスが」


青春マン 「トム・ハンクスと言えば、青春リーダーだよ」


吉川   「えー。すでにおっさんなのに」


青春マン 「青春に年齢は関係ない!」


吉川   「いや、年齢は置いておいたとしても、とても青春と言うキャラクターではないと思いますけど」


青春マン 「トムヤンクンにしておくか」


吉川   「結局、どうでもいいんじゃ」


青春マン 「丁寧に言えばトムヤンサン」


吉川   「トムヤンクンは人名じゃないですよ!」


青春マン 「セレブはトムヤン様。通称ヤン様で若い女性に大人気」


吉川   「そもそも青春と何の関係もないんじゃ」


青春マン 「あ、やべ。ヤン様! ヤン様!」


吉川   「もう、なんの掛け声だかわからなくなってる」


青春マン 「まぁ、共に青春の過ちなどを語り合おうよ」


吉川   「そんな過ちなんてないですよ」


青春マン 「いいのか? とっておきの青春キーワードを言うぞ?」


吉川   「なんですか、青春キーワードって」


青春マン 「雨に濡れたエロ本」


吉川   「昭和!」


青春マン 「どうだ! 甘酸っぱいだろ」


吉川   「エロ本という端末がもう古すぎるのよ。昭和の人の青春なんだよ」


青春マン 「なんだと?」


吉川   「昔にとらわれてるのはあなたの方じゃない? 青春は振り返らないことじゃなかったの?」


青春マン 「……」


吉川   「グゥの音も出ないみたいだな」


青春マン 「振り返るんじゃなくて、もう全身で後ろを向いて、こう前向きな感じの後ろ向きなんだよ」


吉川   「なに言ってるかわからないよ」


青春マン 「いくぞー! アン、デュ、トロワ」


吉川   「またか」


青春マン 「バックする! バックする!」


吉川   「開き直り方がえげつない」



暗転

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