献血
吉川 「最近の新成人ってどうよ?」
藤村 「乱れてるねぇ」
吉川 「乱れてるよなぁ」
藤村 「式典で暴れたり、酒飲んだり、産卵したり」
吉川 「産卵してる人はいない」
藤村 「いや、たまにいるよ。浜辺とかで」
吉川 「どこの式典に出席してるんだ」
藤村 「でも、若いからって許されないことも多いよな」
吉川 「そうなんだよ。もっと大人としての自覚を持って欲しい」
藤村 「俺なんて2歳の頃から大人としての自覚持ってたよ」
吉川 「やな子供だなぁ。ものごころついてないじゃないか」
藤村 「ものごころつくまえから、大人としての一歩を踏み出してたんだよ」
吉川 「勇み足すぎだよ」
藤村 「それに比べて、最近の新成人はなんだ!」
吉川 「お、義憤にかられてるね」
藤村 「産卵も満足にできないとは」
吉川 「いや、それは満足にしなくていいと思う」
藤村 「俺が若い時には産みまくりだったよ」
吉川 「産んだんだ」
藤村 「大体、式典で静かにできないような人間が新成人を名乗っていいのか?」
吉川 「確かにな」
藤村 「ということで、俺は新成人を名乗らないことにした」
吉川 「お前は新成人じゃないだろ。そもそも静かにしろよ」
藤村 「つい、戦神の血が騒いでしまう」
吉川 「いつから戦神の血が通ってたんだ」
藤村 「クォーターだけどね」
吉川 「知らなかったよ。お前がそんな血の持ち主だったなんて」
藤村 「血と言えば、二十歳の献血って言うじゃん?」
吉川 「あぁ、広告してるね」
藤村 「でも献血って16歳以上からできるんだよ。知ってた?」
吉川 「へぇ、そうだったんだ」
藤村 「だから献血した方がいいぜ」
吉川 「いや、別に俺は遠慮しておく」
藤村 「あ。ひょっとして、怖いんだー」
吉川 「怖くはないよ!」
藤村 「いや、その顔は怖がってる顔だね。献血なんて怖くないよ。ちょっとヒットポイントが減るだけ」
吉川 「なんだよヒットポイントって。そんなポイント制は採用してないよ」
藤村 「お前みたいに血の気の多い人間はちょっとくらい抜いた方がいいんだよ」
吉川 「別に血の気は多くないけど」
藤村 「やーい! この、うんこたれー!」
吉川 「そんな低レベルな罵倒で怒るほど血の気は多くない」
藤村 「やーい! この、うんこお食べー」
吉川 「食べないよ! なに田舎のおばあちゃんみたいに差し出してるんだよ」
藤村 「ほら、怒った」
吉川 「怒るっていうか、あきれたよ」
藤村 「まぁ、お前がうんこを食べてるかどうかは置いておいて」
吉川 「待て待て。それは置いておかないでくれ」
藤村 「じゃ、どうぞお食べください」
吉川 「そうじゃなくて、食べてないって! なんで食べてることが当たり前みたいになってるんだ」
藤村 「そんなお前でも献血はできるから大丈夫」
吉川 「なんか、いちいちひっかかるなぁ」
藤村 「血っていうのは、足りなくて困ってるんだぞ?」
吉川 「そうなんだ」
藤村 「お前の、その勇気ある一歩により、助かるものも助からなくなったりするかもしれない」
吉川 「いや、助けてくれよ! なんで俺のせいで助からなくなっちゃうんだ」
藤村 「ほら、勇気を出して!」
吉川 「でもなぁ」
藤村 「なんだ? まだ迷ってるのか?」
吉川 「だって注射するんでしょ?」
藤村 「ほらでた! これだから素人は困る」
吉川 「プロになんかなりたくないよ」
藤村 「注射なんて痛くも痒くも愛しくもないよ」
吉川 「そりゃ、愛しくはないよ」
藤村 「むしろ注射は快感になる」
吉川 「えー」
藤村 「俺なんか、もう注射なしではエラ呼吸もできない身体になってしまった」
吉川 「注射あってもエラ呼吸はできないと思うけど」
藤村 「じゃ、ためしに俺がお前に注射してやるよ」
吉川 「や、やめてくれよ!」
藤村 「チクッとしますよー」
吉川 「うわぁ! やめてぇ」
藤村 「大丈夫。お前の迷いを断ち切ってやる」
吉川 「お前、血迷ってるぞ!」
暗転
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