一年の目標

藤村 「今年一年も始まると言うことで目標を立てようと思う」


吉川 「お、いいね」


藤村 「一年で達成できるようなやつがいいな」


吉川 「まぁ、無理してもしょうがないからな」


藤村 「生きる。ってのはどうだろう」


吉川 「いや、寂しいこと言うなよ。誓わなくても生きようよ、一年くらい」


藤村 「まぁ、これはギリギリで達成できそうだから後回しにするか」


吉川 「ギリギリなんだ。もっと余裕もとうよ、そこのところは」


藤村 「違うんだよ。徐々に目標を高くしていくの」


吉川 「わかった。生きるは、まずOKということにしよう」


藤村 「次は彼女を作る」


吉川 「うわぁ。なんかちょっと難題っぽくない?」


藤村 「やばい。ハードル上げすぎた」


吉川 「う、うん」


藤村 「埴輪を作るに変えておこう」


吉川 「ずいぶんとハードル落としたなぁ。彼女から埴輪か」


藤村 「埴輪なら一年頑張れば作れるだろ」


吉川 「作ってどうするんだよ」


藤村 「それは、もし一年生きられなかったときに一緒に埋めてもらって」


吉川 「お前は、生きるのに自信がなさすぎだ」


藤村 「こればっかりは時の運ですから」


吉川 「ずいぶん危なっかしい運しか残ってないな」


藤村 「埴輪も作ることだし、次の目標は……埴輪を焼く」


吉川 「そんな埴輪にこだわりっぱなしの一年をすごしてどうするつもりだ」


藤村 「そうだった。うっかり埴輪にとらわれてたよ」


吉川 「埴輪は別にいいよ。作らないでも」


藤村 「でも、そうなると彼女を作らなければ……」


吉川 「なんで埴輪OR彼女なんだよ。選択肢が少なすぎるよ」


藤村 「土偶?」


吉川 「違うだろ。もっと、土関係から離れろよ」


藤村 「いやいや。銅鐸はまだ早いでしょ」


吉川 「早いとか遅いとかじゃなくてなんで古代のロマンにこだわってるんだ」


藤村 「そうだった。じゃ、彼女を作るってことでいいかな?」


吉川 「いいんじゃないの? 目標は大きな方が」


藤村 「あー、でも自信ないなぁ。急に自信なくなってきちゃった」


吉川 「大丈夫だって」


藤村 「生きられるかなぁ」


吉川 「そこかよ。そこは一応クリアってことにしないと先に進めないよ」


藤村 「じゃ、次の目標。これは決まってる。彼女と一緒に埴輪を作る」


吉川 「埴輪そんなに作りたいか」


藤村 「いや、なんか流れ的に、ここまできたら作らなきゃ嘘かな、みたいな」


吉川 「そんな嘘どこにもついてないから大丈夫」


藤村 「じゃ、彼女と一緒に埴輪は作らない」


吉川 「そんなこといちいち目標にしなくても普通は作らないだろ」


藤村 「いやいや、わかりませんぞ。うっかり作ってしまったりしたら」


吉川 「どう、うっかり埴輪を作ってしまうんだ。おっと手が滑った! あぁ、なんと土が埴輪に!? ってなるのか」


藤村 「んな馬鹿な」


吉川 「お前が言ったんだろ! なんで俺が馬鹿な人みたいになってるんだ」


藤村 「そうか。じゃ、埴輪はとくに作っても作らなくてもOKってことにしておこう」


吉川 「埴輪に対するスタンスをそれほど明確にしてる人もいないと思うけど」


藤村 「じゃ、次の目標は……禁煙」


吉川 「おー! なんかきたね」


藤村 「きた?」


吉川 「きたきた。これぞ、一年の目標って感じのがやっとでたよ」


藤村 「なんか、目標を決めただけなのにでかいことをしたような気になってきた」


吉川 「まだなにもしてないけどな」


藤村 「とりあえず、禁煙(埴輪と一緒の場合も含む)」


吉川 「待て待て。なんだ、そのカッコは」


藤村 「いや、一応」


吉川 「一応、いらない。普通禁煙って言ったら埴輪があろうとなかろうと吸っちゃダメだ」


藤村 「えー、埴輪ヘルプもなし?」


吉川 「なんだよ。埴輪ヘルプって、特別ルールを勝手に作るなよ」


藤村 「埴輪なしで、やっていけるかなぁ」


吉川 「普通の人は埴輪なしで禁煙するものだよ」


藤村 「みんな根性あるな」


吉川 「お前の埴輪に対する全幅の信頼の方がすごいよ」


藤村 「じゃ、禁煙やめようかな」


吉川 「もうかよ。挫折早いなぁ」


藤村 「正直、埴輪頼みの部分はあったよ。認める」


吉川 「どう頼れるんだ。土人形じゃないか」


藤村 「昔から言うじゃないか。目には目を」


吉川 「あー、どうせ埴輪には埴輪をとか言うんだろ?」


藤村 「そんなこと言わないよ。目には目を、豆から芽が出て三日月が~♪」


吉川 「絵描き歌かよ」


藤村 「埴輪を描いたら~できあ~がり~♪」


吉川 「最後に一気に描き上げちゃってるじゃん。最初の三日月とかどこに行ったんだよ」


藤村 「あれはオプション」


吉川 「絵描き歌の根底を覆す歌だな」


藤村 「しまった。目標を書くはずがいつのまにか埴輪を描いてしまった」


吉川 「いつのまにかじゃないけどね」


藤村 「今年も一年、埴輪づくしになりそうな予感がするな」


吉川 「そんな予感するなよ」


藤村 「まぁ、そんなこんなで今年も一年ハニ丸と言うことで目標を立てようと思う」


吉川 「うわぁ、さりげなく埴輪に支配されてた!」



暗転

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