初夢

吉川 「あけましておめでとう」


藤村 「あ、おめでとう」


吉川 「今年もよろしく」


藤村 「ところで、あれ見た? 初ドリーム」


吉川 「初夢ね。なんか無理やり英語にしなくていいから」


藤村 「あぁ。日本では初夢っていうのか」


吉川 「いや、どこの国でも初ドリームとは言わない」


藤村 「俺の初夢はあれだったな。銀シャリを腹いっぱい食べられる人になりたいなぁ」


吉川 「それは人生的な夢だよね。しかもかなり慎ましい」


藤村 「まぁ、それは結局かなわずじまいだったけどな」


吉川 「食えよ。そのくらい。だいたいなんでもう諦めムードになっちゃってるんだ」


藤村 「そういえば、初夢はあれがいいって言うね。一富士、二鷹、三はスリー」


吉川 「違うよ。三はスリーだけど、急にそこで英語に翻訳する?」


藤村 「それを言うなら。一フジヤーマ、二鷹、三はスリーか」


吉川 「いや、最初から語っぽく言ってもダメ。しかも二の鷹はスルーなんだ」


藤村 「鷹って英語に存在しない言葉だからね」


吉川 「いや、ホークですよ。なに勝手に英語のキャパシティ狭めてるの」


藤村 「俺の初夢なんてすごかったぜ。全部出てた」


吉川 「まじで!? すごいいい初夢じゃん」


藤村 「鷹が頂上で食べてたもん」


吉川 「ナスを?」


藤村 「いや、富士山を」


吉川 「でかい! どこまで巨大な鷹なんだ。だいたい頂上ってどこの頂上だったんだ」


藤村 「焼きナス」


吉川 「でかい! ナスさらにでかい。もう縮尺めちゃくちゃだよ。しかも焼かれちゃってるし」


藤村 「あと七福神とかも宝船で出てきた」


吉川 「うわぁ。最高にいい初夢だ」


藤村 「鷹が食べてた」


吉川 「ダメだよ。食べちゃダメだよ」


藤村 「おなか壊しちゃうからね」


吉川 「いや、そういう問題じゃなくて。神様食べちゃダメでしょ」


藤村 「まぁまぁ、鷹のやったことですから」


吉川 「なんか保護者みたいになっちゃってるし」


藤村 「今年はとり年ということに免じて」


吉川 「いや、寅年だけどね。別に俺に免じる権限はないけど」


藤村 「ところで、お前の初夢はどうだったの?」



***



吉川 「……という初夢を見たんだけど」


藤村 「なるほど。お前の初夢に出演したなんて気がつかなかったよ」


吉川 「いや、普通は気がつかないけどね」


藤村 「お前の初夢でわかることはだな」


吉川 「お? 夢占いなんてできるの?」


藤村 「三はおそらくスリーだ」


吉川 「いや、それはおそらないでもスリーだ」



***



藤村 「……という初夢だったんだ」


吉川 「ややこしいな」



暗転



藤村 「……という初夢を……」


吉川 「もういいから寝ろ」



暗転

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