中国

吉川  「……」


中国人 「……」


吉川  「あ、何か飲みます?」


中国人 「いえ、お気遣いなく」


吉川  「醤油に、味噌に、塩に、あとトンコツもありますけど」


中国人 「や、全部ラーメンのスープじゃないですか」


吉川  「あぁ、そうか。ウーロン茶の方がいいですね」


中国人 「いえ、普通のお茶でいいですから」


吉川  「またまたぁ、中国四千年の歴史が何言ってるんですか」


中国人 「いや、別にそんな飲み物に四千年もこだわってきたわけじゃないですから」


吉川  「なんかつまむものも欲しいですね」


中国人 「いえ、本当にお気遣いなく」


吉川  「今、メンマ切らせちゃってて、ナルトしかないですわ」


中国人 「いや、普通メンマはあんまりご家庭に常備してないでしょ」


吉川  「すいませんねん。四千年」


中国人 「なんか、使い方間違ってるし」


吉川  「いやぁ、でもすごいですね。四千年の歴史は」


中国人 「そんなことないですよ」


吉川  「そんなご謙遜なさらずに」


中国人 「いや、別に私が個人的に四千年生きてるわけじゃないんで」


吉川  「やっぱ、あれですか? 拳は北斗ですかねぇ?」


中国人 「いや、漫画じゃないですか。中国人全員が拳法使いじゃないですから」


吉川  「とか言って、おもむろに猿拳とか出したりして」


中国人 「ださないですよ。おもむろに拳を出したら危ない人じゃないですか」


吉川  「あ、そうだ。あれをお願いしなきゃ」


中国人 「なんですか?」


吉川  「見せてくださいよ。本場のニーハオ」


中国人 「いや、それ挨拶ですから。本場とかあんまり関係ない」


吉川  「そんなご謙遜なさらずに」


中国人 「謙遜してないし、謙遜の意味もわからない」


吉川  「ぜひ、一発」


中国人 「はぁ……、ニーハオ」


吉川  「出たー! 中国四千年のニーハオ」


中国人 「そんな長いこと挨拶ばっかりしてる国じゃないです」


吉川  「やっぱり本物は違いますね」


中国人 「いや、偽者とか本物とかないですから」


吉川  「なんというか。歴史の重みが違いますよ」


中国人 「だから挨拶だって……」


吉川  「あと、あれだ。南京玉簾」


中国人 「そんなのできない!」


吉川  「えー。もったいぶってー」


中国人 「もったいぶってませんよ。そんなのできる中国人のほうが少ない」


吉川  「じゃ、北京ダックで」


中国人 「それはなんだ? 何を要求してるんだ? 私にダックになれと?」


吉川  「だって中国と言えば北京ダックじゃないですか。アメリカと言えばドナルドダックだし」


中国人 「そんな大雑把なダックの分類でいいのか?」


吉川  「あ、ついでにカメハメ波だしてもらおうかな」


中国人 「出ないし。ついでって……」


吉川  「あー、リキマンマンじゃないんだ」


中国人 「リキマンマンでも出ないです」


吉川  「いやぁ、しかし今日はいい四千年を見させていただきました」


中国人 「そんな大長編を見せた覚えはないんですが」


吉川  「いやいや、本当にいいもの見せてもらいました。寿命が四千年くらい延びましたよ」


中国人 「伸びないよ! 火の鳥じゃないんだから」


吉川  「あ、今日は辮髪の方は?」


中国人 「今日はって、そんな日によって辮髪デーとかないですから」


吉川  「あー、あれは正装?」


中国人 「そんな正装してる中国人いませんよ」


吉川  「でも、本当に会えて嬉しいなぁ」


中国人 「じゃ、私はそろそろおいとまを」


吉川  「お、でますか?」


中国人 「それではまた」


吉川  「ズコー! そりゃないですよ」


中国人 「え……」


吉川  「ほら、あるじゃないですか! ヒントはサイ……」


中国人 「……サイツェン」


吉川  「出たー! 中国四千年のサイツェン!」


中国人 「では、次はまた四千年後に」



暗転

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