マジカル

良子 「どうしたの? 吉川くん、最近元気ないね」


吉川 「うん、まぁね」


良子 「わかった! 吉川くんの大切にしていたマジンガーのロケットパンチがどっか行ったまま出てこなくなっちゃったのね?」


吉川 「いや、全然わかってないし。そもそもマジンガーを大切にしてないし」


良子 「いっけね! グレートマジンガーだった」


吉川 「グレートでもないよ」


良子 「う~ん。吉川くんが元気ないと良子も元気でないよぉ」


吉川 「そりゃ悪かった。なんとかするよ」


良子 「よぉし。こうなったら、良子の魔法で吉川くんを元気にしてあげるー!」


吉川 「魔法って……」


良子 「あー! 侮ってるな。こう見えても良子は、マジカル良子としてお茶の間に失笑の渦を巻き起こすこともあるんだぞ」


吉川 「侮ってないし。たぶん失笑は本当に巻き起こるんだろうけど……」


良子 「じゃ、とっておきのトリートメント魔法をいくよ」


吉川 「トリートメント魔法」


良子 「オン! アビラウンケンソワカ……」


吉川 「え……。そういうのなの? なんか、えらい禍々しい空気が漂ってるんだけど」


良子 「気を抜かないで! とり殺されるわよ」


吉川 「えー。ちょ、ちょっと。もっとソフトなやつで頼む」


良子 「そっかぁ。せっかくいい御札を用意したのに」


吉川 「もっとマジカルって言うから洋風なのかと……」


良子 「あ、そういうのがいい?」


吉川 「どういうのでもいいんだけど、安全なのを」


良子 「ベギラマ!」


吉川 「あちっ! なんだよそれ! しかもベギラマってダメージあたえてるじゃん」


良子 「洋風な感じで」


吉川 「熱いよ。なんだ今の火吹きみたいなのは」


良子 「インドの高僧に学んだ秘術だよ」


吉川 「いつの間にそんなものを学んでたんだ」


良子 「じゃ、軽めのやつを」


吉川 「うん」


良子 「ちちんぷいぷい……」


吉川 「また、えらく軽くなっちゃったなぁ」


良子 「痛いの痛いの、揉んどけー!」


吉川 「え? 自主的に? 揉むの?」


良子 「筋肉は揉んでほぐすといいんだよ」


吉川 「別に筋肉痛で弱ってたわけじゃないから……」


良子 「なぁんだ。良子ぽっくり勘違いしちゃったよ」


吉川 「ぽっくりしないでね」


良子 「では吉川くんには禁断の秘薬を差し上げよう」


吉川 「え? これって?」


良子 「シーッ! お上にバレるとコレもんですわ」


吉川 「いや、いらないよ! なんだよコレもんて」


良子 「もう、吉川くんはわがままボーイズだなぁ」


吉川 「ズじゃないけどね」


良子 「もう吉川くんを元気付けるには、アレしかないわね」


吉川 「アレ?」


良子 「わかってるくせにぃ!」


吉川 「い、いや……。あんまりわかってないけど」


良子 「ほぉら、目をつむって……」


吉川 「え……あ、うん……」


良子 「……はい」


吉川 「え? ……なにこれ?」


良子 「マジンガーのロケットパンチ」


吉川 「……ありがとう」


良子 「どういたしましてっ!」



暗転

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