観測史上

吉川 「暑いなぁ」


藤村 「観測史上最高の暑さだって」


吉川 「なんだよ。そんなの、俺が昨日食べた餃子も観測史上最高の厚さだったぞ」


藤村 「そんなものを観測してる人はいない」


吉川 「劉備の耳たぶくらいあった」


藤村 「劉備の耳たぶの実物を見たことないから何とも」


吉川 「観測史上最高っていうのは、結局のところ計ったもん勝ちだろ?」


藤村 「勝ち負けの問題じゃないと思うけど」


吉川 「俺は常々、この曖昧なる記録制度に警鐘を鳴らさねばならぬと思ってたのだ」


藤村 「常々つまらないことを思ってる人だなぁ」


吉川 「俺の髪のサラサラ加減なんか、観測史上最サラだよ」


藤村 「そんなもんどうやって計るんだ」


吉川 「なんかこう、手触りでさ。6サラ」


藤村 「意外と控えめな数字」


吉川 「いまこそ我々は立ち上がるべきだ!」


藤村 「我々って、勝手に巻き添えにしないでいただきたい」


吉川 「お前は観測史上最サイ」


藤村 「なんだ最サイって」


吉川 「観測史上、最もサイに似てる」


藤村 「やだよ! 似てないよ」


吉川 「正確に言うとアフリカクロサイ」


藤村 「正確に言わなくてていい」


吉川 「俺の観測によると揺ぎ無い」


藤村 「観測するなよ。そこは揺るいでおいてくれよ」


吉川 「観測史上最ダーは三ツ矢」


藤村 「三ツ矢サイダーじゃん。ダーってなんだ。ダーって」


吉川 「ダーは、アレだよ。なんか温かいサイダー開けちゃったときに、泡がぶわぁ~って出てきて。あわわわ。ってなっちゃうあの状態だよ」


藤村 「わかりにくい。微塵も共感できない」


吉川 「じゃ、ダーはやめとくか……」


藤村 「意外とあっさり引くな」


吉川 「別にダーになんか何の思い入れもない」


藤村 「じゃぁ、サイも引いてくれよ」


吉川 「サイはダメ。なぜかと言うと似ているから」


藤村 「丁寧に諭された。似てねーよ」


吉川 「観測史上最似だよ。俺のルパンくらい似てる」


藤村 「これは、いずれ言わなければならないと思っていたことだが、お前のルパンはまったく似てない」


吉川 「ガーン! 観測史上最ガーン!」


藤村 「なんかうざったいリアクションだな」


吉川 「そんなことないよ! 似てるはずだ」


藤村 「いや、ルパンのモノマネする人は数いれど、お前のルパンほどお粗末なるパンは聞いたことない。観測史上最似てない」


吉川 「ジ~ゲェ~ン♪」


藤村 「そもそも、ルパンは、あんまり次元をそんな風に呼ばない!」


吉川 「くそ! 今回は俺の負けだ」


藤村 「あ、認めた」


吉川 「だがな、かならずでっかくなって帰ってくるぜ」


藤村 「いや、別にルパンのモノマネなんて比較的どうでもいい」


吉川 「新たなる船出だ。観測史上最ナラ!」


藤村 「はい。さようなら」



暗転

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