前世

吉川 「私たちは」


良子 「私たちは」


吉川 「前世の」


良子 「記憶で」


二人 「つながってます」


吉川 「おつう、愛してるよ」


良子 「私もよ、アレクサンドロス」


吉川 「私たちは」


良子 「私たちは」


吉川 「前世の」


良子 「記憶で」


二人 「つながってます」


吉川 「思い出すなぁ、おつう。あの愉快な日々」


良子 「そうそう、アレクサンドロス。お醤油が切れてお隣に借りに言った時」


吉川 「あの時はラクダがなくて難儀したよ」


良子 「……思い出すわぁ」


吉川 「私たちは」


良子 「私たちは」


吉川 「前世の」


良子 「記憶で」


二人 「つながってます」


吉川 「そういえば、おつう。よく喧嘩もしたっけ」


良子 「そうね、アレクサンドロス。あれはあなたの浮気が原因よ」


吉川 「あの時は、砂漠に放り出されて死ぬかと思ったよ」


良子 「……思い出すわぁ」


吉川 「私たちは」


良子 「私たちは」


吉川 「前世の」


良子 「記憶で」


二人 「つながってます」


吉川 「おつう、満天の星空の下で誓ったっけなぁ」


良子 「そうよ、アレクサンドロス。いつか二人が死んだとしても」


吉川 「アッ・サラーム アライクム」


良子 「……あの……ちょっといいかしら?」


吉川 「私たちは」


良子 「あ……私たちは」


吉川 「前世の」


良子 「記憶で……」


二人 「つながってます」


吉川 「なんだい? おつう?」


良子 「アレクサンドロス、私たち、ひょっとしたら、大変な勘違いをしてないかしら?」


吉川 「なんだってっ!?」


良子 「私の記憶違いじゃなければ……」


吉川 「うん」


良子 「借りにいったのは、お醤油じゃなくてお味噌じゃなかったかしら?」


吉川 「そうだったね。おつう」


良子 「アッ・サラーム アライクム」


吉川 「私たちは」


良子 「私たちは」


吉川 「前世の」


良子 「記憶で」


二人 「つながってます」



暗転



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