言いたい
藤村 「いやぁ、しかし、のべつまくなしだよ」
吉川 「なにが?」
藤村 「だから、のべつまくなし」
吉川 「だから、なにが、のべつまくなしなの?」
藤村 「なにって……そりゃ、のべつだよ」
吉川 「のべつ? なにそれ?」
藤村 「まくなしだよ」
吉川 「……意味わかってないでしょ?」
藤村 「バカ! わかってるよ」
吉川 「のべつってなによ?」
藤村 「のべつはほら、例の、の……登別?」
吉川 「温泉じゃん。登別の略がのべつなの?」
藤村 「違うな。えっと……別なんだよ。○○の別バージョンみたいな」
吉川 「ふぅん。それがのべつなんだ」
藤村 「あぁ、のべつだね。のべつの別みたいな」
吉川 「まくなしは?」
藤村 「まくなしは、なんか巻いてあるやつだよ」
吉川 「なにを?」
藤村 「……梨?」
吉川 「言うと思った」
藤村 「とにかく俺はのべつまくなしなんだよ」
吉川 「あのさ……言いたいだけでしょ?」
藤村 「ギックリ!」
吉川 「なんだ、その腰を痛めたようなわかりやすいリアクションは」
藤村 「コロボックリ!」
吉川 「そんなボックリはいない」
藤村 「だってさぁ、のべつまくなしたいじゃん?」
吉川 「まくなしたいのか」
藤村 「のべつをね」
吉川 「でも、意味を知ってから使った方がいいよ」
藤村 「意味なんてあとから考えればいいんだよ! 俺は唯物論者だから」
吉川 「唯物論者ってどんな意味?」
藤村 「バカ! そんなの……決まってるじゃん。例の人たちだよ」
吉川 「知らないよ、そんな例は」
藤村 「お前はいちいち細かいことにうるさいな」
吉川 「意味知らないで言いたいだけで言うほど大雑把じゃないよ」
藤村 「いいじゃん。俺だって賢くみられたいじゃん」
吉川 「まぁ、人には色々事情があるからな」
藤村 「そうだよ。俺には大変深い事情があるんだよ」
吉川 「のっぴきならない事情か」
藤村 「あっ! それ言いたかったのに! のっぴきたかったのに!」
吉川 「そうか、のっぴきたかったのか」
藤村 「のっぴきてーよ、なんだよ」
吉川 「わかった。じゃ、いいよ。のっぴいて」
藤村 「まじで!? お前、いいやつだなぁ。じゃ、のっぴくよ」
吉川 「がんばれよ」
藤村 「おう! よぉし、のっぴくぞぉ」
吉川 「うん」
藤村 「……」
吉川 「……」
藤村 「……のっぴきって、どうすればいいの?」
吉川 「それは教えられない」
藤村 「なんでだよ! 教えてくれよ!」
吉川 「のっぴきなら……無い」
暗転
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