やめる
吉川 「俺、やめようと思うんだわぁ」
藤村 「仙人にでもなるの?」
吉川 「いや、人間じゃないよ? というか、そんな選択肢、普通考えないでしょ」
藤村 「そうなの? ちぇっ」
吉川 「何でそこで残念な感じになっちゃってるの?」
藤村 「じゃ、なに? 例の猥褻なやつ?」
吉川 「なんだよ猥褻なやつって! 身に覚えないよ」
藤村 「はたしてそうかな?」
吉川 「そうだよ! なんだ、そのいやらしい目つきは! そんなことした覚えない」
藤村 「そうか。あくまで否定するならしょうがない。……で、なにをやめるの?」
吉川 「なんか疑惑が晴れないままになってる気がするんだけど。まぁ、あれだ。タバコ」
藤村 「猥褻な?」
吉川 「そんなタバコあるか!」
藤村 「あくまで否定する気か……」
吉川 「だから、普通のタバコだって! 禁煙しようと思ってるの」
藤村 「あぁ。最近なにかと話題になってるからね」
吉川 「そうなの?」
藤村 「うん。地球温暖化とか」
吉川 「いやいや、それは別問題でしょ」
藤村 「そうか?」
吉川 「そんな、温暖化の全責任を押し付けられても困る」
藤村 「まぁ、やめるのはいいことだと思うよ。ほら、昔から言うじゃない?」
吉川 「あぁ、百害あって……ってやつ?」
藤村 「そうそう、百害あって三千里」
吉川 「なんか母を訪ねちゃったみたいじゃん。多すぎだよ」
藤村 「それから、こういう格言もあるな」
吉川 「どんなの?」
藤村 「タバコ吸うと死ぬって」
吉川 「そんな直接的な格言ないよ!」
藤村 「タバコ吸うと苦しんで死ぬ」
吉川 「レベルアップした」
藤村 「タバスコ飲むと狂い死ぬ」
吉川 「関係ない人まで巻き込まれた!」
藤村 「どうせお前は意志が弱いから俺が協力してやるよ」
吉川 「あぁ、ありがとう」
藤村 「どうしてもタバコ吸いたくなったら言ってくれ」
吉川 「うん」
藤村 「キスしてあげる」
吉川 「なんでだよ!」
藤村 「バカ! さきに口をふさいでおけばタバコ吸えないだろ」
吉川 「いや、でもキスする必要なんて無いじゃん」
藤村 「そんなの、してみないとわからないじゃん」
吉川 「わかるよ! やだよ」
藤村 「誰のためだと思ってるんだ!」
吉川 「いや、俺のためかも知れないけど、でもやだよ」
藤村 「吉川くんの……どんかん……」
吉川 「え……」
藤村 「もう……知らない!」
吉川 「ま、待てよ!」
藤村 「都合のいいときだけ優しくしないで!」
吉川 「ご、ごめん。でも、俺、気持ちには……」
藤村 「……とまぁ、禁煙には色々な誘惑があるわけだ」
吉川 「……」
藤村 「だから強い意志をもって望むんだぞ」
吉川 「は、はぁ……」
藤村 「どうした?」
吉川 「なんだか、煙に巻かれたような気がして」
暗転
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます