じゃんけん

吉川 「よし、じゃぁ、じゃんけんで決めようぜ?」


藤村 「そこまで言うんだったらいいだろう。スポーツマンシップにのっとってじゃんけんしよう」


吉川 「べつにのっとらなくてもいいけど」


藤村 「いくぞ」


吉川 「じゃん……」


藤村 「ちょっと待った」


吉川 「なんだよ?」


藤村 「何回勝負だ?」


吉川 「あぁ、どうしようか」


藤村 「きりのいいところで10万にするか」


吉川 「そんなにやだよ! 多すぎる」


藤村 「先に5万1勝した方が勝ち」


吉川 「もっと3回勝負とかにしようぜ」


藤村 「じゃ、間をとって5万1回勝負にするか」


吉川 「だから多いって。間とっても全然近づかないじゃないか」


藤村 「じゃ、わかった。三回半にしよう」


吉川 「なんだ半って」


藤村 「半は半だよ。え~と、あいこ?」


吉川 「意味がわからない。どうやって決着がつくんだ」


藤村 「先に3勝1引き分けの方が勝ち」


吉川 「2引き分けしちゃった方は?」


藤村 「負け」


吉川 「いやいや、待たまえ。引き分けはお互いにするわけだから、片方が2引き分けなら、もう片方も2引き分けだ」


藤村 「そうか……ま、その時は俺の勝ちってことで」


吉川 「なんでだよ!」


藤村 「芸術点で」


吉川 「なにそれ! なんでじゃんけんに査定もちこんでるの?」


藤村 「俺の方がきらびやかなチョキをだす」


吉川 「意味がわからない」


藤村 「はかなくもあり、力強くもある、そんなチョキ」


吉川 「わかった。チョキだな」


藤村 「しまった! チョキを出すと宣言してしまった」


吉川 「きらびやかなのを見せてもらおうじゃないか」


藤村 「くそぉ。あぁ、きらびやかなパーがみたいな」


吉川 「出さないぞ」


藤村 「俺の策略に引っかからないとは、なんて頭のよいやつだ」


吉川 「じゃ、いくぞ。じゃん……」


藤村 「待った!」


吉川 「今度は何だよ」


藤村 「あっち向いてホイあり?」


吉川 「あー、どうしよう」


藤村 「それによっては、俺は本気にならなければならない」


吉川 「はじめから本気でいけよ」


藤村 「ついにこのジャケットを脱ぐときがきたか」


吉川 「普通のジャケットじゃん」


藤村 「ちょうど、蒸し暑かったんだ」


吉川 「暑さで脱ぐのかよ。本気とか関係ないじゃん」


藤村 「涼しくなった俺に敵はいない」


吉川 「そういうのは勝ってからいえ」


藤村 「よりいっそうきらびやかなチョキをおみまいしてやる」


吉川 「じゃぁ、俺は普通のグー」


藤村 「くそっ! お前にはプライドがないのか」


吉川 「プライドに賭けて普通のグーを出す」


藤村 「……とみせかけて、実は俺は嘘つき村の住人でした」


吉川 「嘘つき村の住人は自分では嘘つきとは言わない!」


藤村 「はっ! なんてこった。最後の作戦もこのありさま」


吉川 「お前はきらびやかなチョキで負ける」


藤村 「くそぉ」


吉川 「いくぞ」


藤村 「じゃんけんぽん!」


吉川 「あ! 汚ね!」


藤村 「あっちむいてろっ!」


吉川 「え、命令なの?」



暗転

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