不老不死

博士 「吉川くん。空前絶後、世紀の珍発明じゃ」


吉川 「いったいどんな珍発明をしでかしたんですか?」


博士 「聞いておどけるなよ」


吉川 「おどける理由なんてありませんよ」


博士 「なんと、ジャッジャーン! 不老不死の薬」


吉川 「え……」


博士 「ほら、おどけるなら今だぞ!」


吉川 「だから、おどけませんて」


博士 「そんじゃ、ワシがおどけちゃおう! うきゃきゃきゃきゃ!」


吉川 「博士。落ち着いてください」


博士 「はっ! ワシとしたことが、つい吉川くんの口車にのってしまって」


吉川 「そんな車を出した覚えはありませんよ」


博士 「ともかく、この不老不死の薬は完璧。画期的なんじゃ」


吉川 「不老不死って、本当なんですか?」


博士 「ワシが嘘をつくような人間に見えるか!」


吉川 「はい」


博士 「まぁ、そのことに関してはグゥの音もでないな。うきゃきゃきゃ!」


吉川 「おどけるのは結構ですから、薬の説明をしてください」


博士 「吉川くん、人間の細胞は日々生まれ変わっているのを知っているな?」


吉川 「あぁ、新陳代謝ですか?」


博士 「そう。そのちんちんかもかもじゃ」


吉川 「そのちんちんかもかもがどうかしたんですか?」


博士 「……ちんちんかもかもじゃなくて新陳代謝じゃよ」


吉川 「えぇ」


博士 「吉川くんは、なんというか、人としての温かみというのがないな」


吉川 「博士のどうしようもないボケにつきあってられないだけですよ」


博士 「まぁ、その新陳代謝により、古い細胞は死に、新しい細胞が生まれる」


吉川 「はい」


博士 「その際に、まったく同じ細胞が生まれるわけではなく、微妙に変化した細胞が生まれる。これにより、人は成長し、老化していくわけだ」


吉川 「そうですね」


博士 「ワシの作った薬のすごいところは、この細胞の変化をゼロにしたことだ」


吉川 「どういうことですか?」


博士 「つまり、まったく同じ細胞が常に作られる。そのため、その人間はまったく変化することなく、生き続ける」


吉川 「えー」


博士 「身体に傷をつけたとしよう、しかし、傷ついた細胞は死に、傷つく前の細胞が生まれる。何者でも傷つけることはできない完璧な身体になるのじゃ」


吉川 「そ、そんな……」


博士 「おどけたか?」


吉川 「いや、全然おどけてないですけど……そんなことしちゃっていいんですか?」


博士 「人類はついに新たなステージへ足を踏み入れたのじゃよ」


吉川 「でも、変わらないとしたら……博士はずっとおじいちゃんのままですね」


博士 「それはちゃんと考えてある」


吉川 「なんですか?」


博士 「クローンじゃ」


吉川 「クローン!」


博士 「そう。ワシのクローン体をつくり、若々しい時期に脳細胞の移植をする」


吉川 「しかし、そんなこと!」


博士 「忘れたかね? ワシには永遠の時間があるのだよ」


吉川 「はっ、そうですね」


博士 「どうじゃ。完璧な計画じゃろ」


吉川 「もし、その薬が成功したとしたら、とんでもないことになりますね」


博士 「うむ。今からワシ自ら、人体実験じゃ」


吉川 「博士。大丈夫なんですか?」


博士 「大丈夫。見ておれ。グビッ」


吉川 「博士?」


博士 「吉川くん……」


吉川 「博士? 大丈夫ですか?」


博士 「吉川くん、成功じゃ」


吉川 「本当ですか?」


博士 「ワシが、この薬を飲む瞬間、何を考えたかわかるかね?」


吉川 「いや……恐れ……ですか?」


博士 「違う。そんなことじゃない」


吉川 「じゃぁ、なんなんですか?」


博士 「おならしたいなぁ……と」


吉川 「……」


博士 「そして飲んだ瞬間、ワシはしたぞ! 屁を」


吉川 「それがどうしたんですか?」


博士 「忘れたのか? 吉川くん。常に同じ細胞が生まれつづける」


吉川 「……?」


博士 「すなわち、屁をした私の細胞は、また、同じ状況で生まれる」


吉川 「それがなにか?」


博士 「さっきから、おならが出っぱなしじゃ!」


吉川 「博士……」


博士 「おならをし終わった細胞が、またする前に生まれ変わり、そしてまたおならをする」


吉川 「博士……」


博士 「おならが止まらないよぉ。プップクプップクで続けるよぉ」


吉川 「博士……」


博士 「吉川くん、止めてぇ~」


吉川 「死ね!」


博士 「それは無理ぃ~」



暗転

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