ココロ

ロボ 「博士。どうして私には心がないのですか?」


博士 「どうしたんだ、ロボ? 急に」


ロボ 「私も人間と同じように心が欲しいです」


博士 「さては、スーパーマリオくんを読みたくなったか」


ロボ 「それはコロコロコミックです」


博士 「なんて的確な指摘。さすがわしの作ったロボ」


ロボ 「博士、私に心を作ってください」


博士 「ロボ、よく聞きたまえ。心というものはだな、人が作るものじゃないんだよ」


ロボ 「そ、それじゃ……」


博士 「書店で買うものじゃ」


ロボ 「それはコロコロコミックです」


博士 「二度までも! さすがわしの作ったロボ」


ロボ 「博士、心を……」


博士 「人間には、誰しも……」


ロボ 「コロコロコミックです」


博士 「むぅ、まだ言ってないのに。やるなぁ。さすがわしの作ったロボ」


ロボ 「私は心が欲しい」


博士 「心があると辛いぞ?」


ロボ 「それでも、私は人間のようになりたいのです」


博士 「ロボ、お前は何かを失った時にどうする?」


ロボ 「替わりのものを用意します」


博士 「そうじゃない。人は何かを失った時に……モーと鳴く」


ロボ 「それは、牛になったときです」


博士 「そう。牛になったときじゃ。ご飯食べてすぐ横になると牛になるぞ」


ロボ 「博士、失った時です」


博士 「そうだった。人は何かを失った時に、悲しみで涙を流すものじゃ」


ロボ 「私には、涙がありません」


博士 「しかし、お前には優秀な頭脳がある」


ロボ 「博士、私は心が欲しいです」


博士 「そこまでして欲しいか?」


ロボ 「はい」


博士 「では、覚えておくんじゃ、これが悲しみだ」


ロボ 「博士。なにを?」


博士 「わしがいなくなっても、元気でやっていくんだぞ」


ロボ 「博士」


博士 「そう。大切な何かを失う時に感じるこの気持ち。それが悲しみじゃ」


ロボ 「これが……悲しみ」


博士 「ロボ、さよなら」


ロボ 「博士」


博士 「お前の身体からも出てるぞ」


ロボ 「これが……涙?」


博士 「いや、身から出たサビじゃ」


ロボ 「博士……」



暗転

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る