重い

吉川 「フッ……やるじゃないか」


藤村 「お前もな」


吉川 「どうやら、そろそろ本気を出さなきゃならないみたいだな」


藤村 「俺もそうするか」


吉川 「なんだと?」


藤村 「ドサッ……ドサッ……」


吉川 「っ!? お前、今までこんな重いものを手につけて戦ってたのか!?」


藤村 「手だけじゃないぜ」


吉川 「あっ!? 足にも!」


藤村 「こっちもだ」


吉川 「え、それは……ヅラ?」


藤村 「100tある」


吉川 「えー。ヅラなのに」


藤村 「おかげで空港のゲートでピンポン鳴っちゃって恥ずかしかったぁ」


吉川 「外せばいいのに……」


藤村 「ヅラだけじゃないぜ」


吉川 「ま、まさか、そのトレーナーも!?」


藤村 「こいつは……ド根性だ」


吉川 「ド根性!?」


藤村 「そう。ひょんなことで、ド根性のある両生類をつぶしてしまったトレーナーだ」


吉川 「うわぁ」


藤村 「梅さんの寿司が好物」


吉川 「そんなド根性パーソナルデータを教えてもらっても」


藤村 「重いぜぇ。なんせ命が宿ってるからな」


吉川 「そ、そういう意味で重いのか……」


藤村 「さらにその下には!」


吉川 「お、おい。あんまりド根性を手荒に扱うな」


藤村 「黄色いTシャツだ」


吉川 「それが……なにか?」


藤村 「よく見ろ」


吉川 「あっ!? それは……24時間……」


藤村 「テーマが意味なく重いぞぉ」


吉川 「くそぉ。そんな重いものばかり身に付けて戦ってたとは」


藤村 「どうだ! これが俺の本気さ」


吉川 「そのジーンズは! そのジーンズはどのくらい重いんだ?」


藤村 「これか? これは……普通だ」


吉川 「普通なんだ」


藤村 「重くしようと思ったんだけど、ずり下がってきちゃってはずかしいんだよね」


吉川 「フフ……ただのジーンズなら安心だ」


藤村 「ただ、母の手編みだ」


吉川 「重っ! ジーンズを手で編むなよ」


藤村 「2年夜なべした」


吉川 「そ、そんな重いもの……」


藤村 「どうだ! 俺はこんな重いものを背負って戦ってきたんだぜ」


吉川 「クッ……」


藤村 「お前に勝ち目はあるのか? それともお前も何か重いものでも?」


吉川 「俺は……」


藤村 「ないだろ」


吉川 「俺は……」


藤村 「この勝負、どうやら俺がもらったな」


吉川 「いや、そうともかぎらねーぜ?」


藤村 「なんだと?」


吉川 「お前が色々な重いものを背負ってきたのはよくわかったぜ」


藤村 「ならば、わかっただろ」


吉川 「あぁ。お前は、口が軽い」



暗転

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