のっぺらぼう

藤村 「のっぺらぼうってさ」


吉川 「うん」


藤村 「究極のしょうゆ顔だと思わない?」


吉川 「しょうゆ顔っていうのもずいぶん懐かしい概念だけど」


藤村 「つるんとしててさ」


吉川 「あぁ」


藤村 「肌だって綺麗なはずだろ?」


吉川 「そうだなぁ」


藤村 「でさ、のっぺらぼうの話のすごいところってさ」


吉川 「うん」


藤村 「のっぺらした顔のことじゃないでしょ?」


吉川 「どういうこと?」


藤村 「のっぺらぼうに会って驚いて、誰かに助けを求めに行くと、その人ものっぺらぼう」


吉川 「あぁ、そうだね」


藤村 「これってさ、すごいことじゃない?」


吉川 「怖いな」


藤村 「そうじゃなくてさ、瞬間移動ができるってことだよ」


吉川 「そうなの?」


藤村 「しかも早着替え付き」


吉川 「はじめから二人いたんじゃないの?」


藤村 「そんな、のっぺらぼうが何人もいるなんて非現実的じゃない」


吉川 「いや、一人でも十分非現実的だけどな」


藤村 「だからさ、そんなにいないんだよ」


吉川 「そうなのか」


藤村 「そうそう。そうなると、瞬間移動と早着替え。この二つができる妖怪って言うのはそうとうな高レベルだと思うんだ」


吉川 「そうだなぁ」


藤村 「今まで、のっぺらぼうなんて、ただのつるんとしただけの存在だと思われてきたけど、そうじゃなかったんだよ」


吉川 「なんか必死だな」


藤村 「いまこそ、のっぺらぼう復権の時だよ」


吉川 「いや、それほどか?」


藤村 「虐げられてきた人生に火を!」


吉川 「虐げられてきたんだ。のっぺらしながら」


藤村 「いまこそ、のっぺらぼうの天下よ!」


吉川 「お前は、あいかわらず現実が見えてないなぁ」


藤村 「しょうがないじゃん。目がないんだもん」



暗転

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