おとぎ話

藤村 「あ~、夢のある生き方をしたい」


吉川 「なんだ唐突に」


藤村 「現実は辛いんだよぉ」


吉川 「泣き言か」


藤村 「そこで、オリジナルのおとぎ話を考えたんだけど聞いてよ」


吉川 「オリジナルで作っちゃったの?」


藤村 「夢いっぱいだよ」


吉川 「まぁ、いいけど」


藤村 「まず主人公は山田」


吉川 「え?」


藤村 「山田。あれだ。手先が器用な方の」


吉川 「いや、器用さで区別する以前に誰だ? 山田は」


藤村 「山田は山田だよ。物語の主人公」


吉川 「いや、もっとさ、なんていうか、王子様とかお姫様とか、そういうのが主人公 じゃないの?」


藤村 「山田のカリスマ性に文句でもあるのか?」


吉川 「いや、カリスマ性知らないもの。山田がそんなすごい人物だったとは」


藤村 「図書委員を務めたこともある」


吉川 「中途半端なカリスマ性だなぁ」


藤村 「二年半」


吉川 「いや、別に任期はどうでもいい」


藤村 「山田が大活躍するぜ」


吉川 「そうか。じゃ、俺も山田に賭けてみるよ」


藤村 「その山田が、なんと朝起きると突然……!」


吉川 「変身していたとか?」


藤村 「そう。なんと、中間管理職に」


吉川 「いやいや、普通じゃん。ちょっとした出世じゃん」


藤村 「鏡を見てびっくりだよ」


吉川 「いや、鏡見てもわからないでしょ」


藤村 「何かの呪いか!?」


吉川 「いや、もっとさ、違うじゃん? ロバになるとか、モンスターになるとか、そ ういうのじゃない?」


藤村 「中間管理職も大変だぜ」


吉川 「いや、大変かも知れないけど、夢がないじゃん」


藤村 「そうだった。じゃ、朝起きると大きさが変わっていた」


吉川 「そう。そういうのがいい」


藤村 「なんと親指くらいの大きさに!」


吉川 「お、親指姫っぽいねぇ」


藤村 「ガンダムの」


吉川 「たいして変化ないじゃん」


藤村 「むしろ、普通の人より大きめ」


吉川 「ちょっとしたジャイアント山田じゃん」


藤村 「そこで山田が愛と冒険の大活躍をする」


吉川 「すごい肝心の部分を大雑把に話しちゃうなぁ」


藤村 「途中で、挫折、友の死、献血、努力、ピンチ、献血、恋、献血、と様々な冒険 が」


吉川 「献血してばっかりじゃん」


藤村 「もう、身体がボロボロになるほどに!」


吉川 「いや、加減しろよ。献血でボロボロになるなよ」


藤村 「そしてついに力尽きてしまう山田」


吉川 「山田! なんか、応援し甲斐のない倒れ方だけど」


藤村 「その時、山田の耳に届く声が」


吉川 「いったいどんな」


藤村 「めでたしめでたし」



暗転

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