怖い話

吉川 「怖い話でもする?」


藤村 「あ。いいね」


吉川 「突然、大津波がやってきた時の話ね」


藤村 「え? そういう意味の怖い話なの?」


吉川 「怖いぜぇ。大パニック」


藤村 「怖いけどさぁ……なんか、そういうの違くない?」


吉川 「そう?」


藤村 「もっと、なんというか身近な怖さがいい」


吉川 「じゃ、近所の川が氾濫して」


藤村 「いやいや、根本的に何も変わってないでしょ。水害じゃん」


吉川 「もう、農作物とかにすごい影響でちゃって」


藤村 「そうじゃなくて。あぁ、もう、なんていうかな」


吉川 「タクシーの運転手が……」


藤村 「そう! そういうの」


吉川 「ビッシリ一億匹集まって……」


藤村 「待て待て。全然そうじゃない」


吉川 「怖いぜぇ。タクシーの運転手、一億匹」


藤村 「確かに怖いけど」


吉川 「あっちも、こっちも、タクシーの運転手」


藤村 「そうじゃないんだよ。もっと手のひらサイズの怖さ」


吉川 「手のひらサイズのタクシーの運転手が……」


藤村 「そんなのいない!」


吉川 「いないから怖いんだよ」


藤村 「そりゃ、いたら怖いけど」


吉川 「俺の先輩の話なんだけど……」


藤村 「そう! それだ」


吉川 「もう、キレるとすっげー怖いの」


藤村 「違う」


吉川 「まじでやばいって」


藤村 「そういう怖さじゃなくて」


吉川 「小兵の力士くらいなら、素手で倒すらしいぜ?」


藤村 「その例えもいまいちピンとこないし」


吉川 「俺の後輩が、実際に体験した話なんだけど……」


藤村 「来た! それだ!」


吉川 「先の大戦で徴兵に行ったときにね……」


藤村 「いくつだ!? お前の後輩はいくつだ? そしてお前はいくつなんだ」


吉川 「もうないよ。怖い話はでつくした」


藤村 「なんか、全然出切ってないよ」


吉川 「もう、あんまり怖くない話しかない」


藤村 「この際、普通の話でもいいや」


吉川 「コンピューターウィルスってあるでしょ?」


藤村 「うん」


吉川 「あれみたいに、パソコンの中に霊がいることがあるんだって」


藤村 「なに? 突然、画面に現れるとか?」


吉川 「ううん」


藤村 「データを消すとか?」


吉川 「ううん。なにもしない」


藤村 「なにもしないの?」


吉川 「うん」


藤村 「じゃ、怖くないじゃん」


吉川 「そうなんだよ。怖くないんだよ」


藤村 「なんだそれ」


吉川 「ただ、ファンとかの隙間から、じーっとこっちを見てるんだって」



暗👁👁転

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