桃太郎

桃太郎 「っていうかさ、実際無理ありすぎんだよな」


猿   「はぁ」


桃太郎 「俺ね、桃から生まれたんだけどさ」


猿   「あ、それ知ってます。だから桃太郎」


桃太郎 「そうそう。あ、ちなみに、桃太郎さんだろ? さんは?」


猿   「あ……。す、すみません」


桃太郎 「別にさぁ、桃から生まれたからってすごくないわけよ。それをなんだよ、人のこと超人みたいに言ってさ」


猿   「いや、でもお噂はかねがね」


桃太郎 「何で桃から生まれたくらいで鬼退治しなきゃならないんだよ。鬼とか普通に怖いっちゅーねん」


猿   「あぁ、怖いんですか」


桃太郎 「当たり前じゃん。桃から生まれたからって、すごくないよ。ちょっと肌がしっとりしてるくらいなもんだよ?」


猿   「えぇ! そういう効果のみなんですか?」


桃太郎 「そうそう。桃の成分で保湿効果はバッチリだからね」


猿   「鬼には……関係なさそうですね」


桃太郎 「そうだよ。だいたいさ、鬼退治行くのに、アイテム団子だけってどういうことだよ」


猿   「いや、私に言われましても」


桃太郎 「しかもきび。せめて米にしろっちゅーの」


猿   「はぁ、でもそのおかげで私たちが……」


桃太郎 「ないよ」


猿   「え……」


桃太郎 「小腹がすいたから出発して10分で全部食べちゃった」


猿   「えぇっ!?」


桃太郎 「え? なに? お前も?」


猿   「いや、お前もと言いますと」


桃太郎 「なんか途中で犬がさ、団子くれないのは契約不履行だ。とか、弁護士に相談するとか面倒くさいこと言ってたからさ」


猿   「そ、それで犬は?」


桃太郎 「あまりうるさいからいたずらしてやった」


猿   「まさか、眉毛を書いたりとか……」


桃太郎 「いや、眉毛だけじゃあきたらず、夏のバッチリメイクをしてやった。これであなたもビーチクイーンってやつ」


猿   「うわぁ、犬なのに……」


桃太郎 「お前もなに? 結局団子が目的なわけ?」


猿   「いや、というか……」


桃太郎 「なんだよ?」


猿   「あ、あの、あれは? キジ! キジはどうなりました?」


桃太郎 「あぁ。キジね……あいつは……」


猿   「やっぱり、一悶着あったんですか?」


桃太郎 「いや、そういうのはない」


猿   「え? 意外!」


桃太郎 「ただ……」


猿   「ただ?」


桃太郎 「……美味かったなぁ」


猿   「っ!? 鬼!」



暗転

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