七夕

良子 「吉川くん、タナボタですよ!」


吉川 「なんだ急に?」


良子 「織姫と彦星の」


吉川 「あぁ。七夕ね。タナボタは餅だからね」


良子 「そうそう。棚からバタ餅」


吉川 「なんか胸焼けしそうな餅が降ってくる日だな」


良子 「ロマンチックだよねぇ」


吉川 「まぁ、そうだね」


良子 「ボ~サ~ノ~バ~シャ~バダバ~♪」


吉川 「笹の葉サラサラだよ。なんだその不意に陽気な歌詞は」


良子 「笹の葉と言えばパンダで決まりだね!」


吉川 「いったいなにが決まったんだ」


良子 「パンダも笹の葉とか短冊とか食べながら祈ってるよ」


吉川 「いや、短冊食べちゃダメだろ」


良子 「みんなの夢を食べるんだよ」


吉川 「それはバクだ」


良子 「吉川くんは細かいところばっかり気にするなぁ」


吉川 「だいぶ大雑把な間違いだと思うけど」


良子 「吉川くんは何お願いしたの?」


吉川 「いやぁ、もうさすがにいい年なんでお願いはしてないなぁ」


良子 「良子はね、新しい服をお願いしたよ」


吉川 「いや、具体的なプレゼントをもらえる日じゃないぞ」


良子 「馬鹿だなぁ吉川くんは。慌てんぼうのサンタクロースが間違えてくれるかもしれないじゃない」


吉川 「いや、いくら慌ててても、それはないと思う」


良子 「でも年に一回会える日なんだから晴れるといいね」


吉川 「天の川は雲のもっと上だから雨でも別に変わらないと思うよ」


良子 「うわぁ。吉川くんてば夢がない!」


吉川 「すまんね、すれた大人で」


良子 「もう。そんなこというとプレゼントあげないぞ」


吉川 「え? プレゼントってなに?」


良子 「えへへ。織姫にちなんで編んできました~!」


吉川 「え、編むって、今夏なのに? マフラーとか?」


良子 「良子はそんな季節はずれなことしません」


吉川 「そ、そうだよね……で、なに?」


良子 「えへへ。夏っぽさ満点だよ!」


吉川 「サマーセーターかな?」


良子 「ううん、これ」


吉川 「え? なにこれ?」


良子 「網戸」


吉川 「手編み!?」



暗転

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