指示代名詞

吉川 「例えばさぁ」


藤村 「例えば?」


吉川 「例えば……え~と……あれだよ」


藤村 「夏とか?」


吉川 「そう! それ! 夏だ」


藤村 「夏かぁ」


吉川 「そうそう、夏だった」


藤村 「で、夏が?」


吉川 「夏がすごいんだよ。……例のあれで」


藤村 「例のあれって?」


吉川 「例のあれは、ほら、あれだよ」


藤村 「水着?」


吉川 「そうそう! 水着」


藤村 「やっぱり水着か」


吉川 「水着があれじゃん?」


藤村 「だからなによ」


吉川 「あれだよ」


藤村 「ビキニ?」


吉川 「そう。ビキニ。水着と言えばビキニ」


藤村 「そうか」


吉川 「ですごいんだよねぇ。ビキニのあれが」


藤村 「ビキニのあれかぁ」


吉川 「うん、すごいんだわ」


藤村 「へぇ……」


吉川 「……」


藤村 「なるほどねぇ」


吉川 「気にならないの?」


藤村 「なにが?」


吉川 「なにって、あれ」


藤村 「だからあれでしょ?」


吉川 「う、うん」


藤村 「あれがねぇ……」


吉川 「あ、違う! そのあれじゃないわ」


藤村 「なにが?」


吉川 「お前の思ってるあれと俺の言ってるあれは違うあれだ」


藤村 「俺の思ってるあれってなに?」


吉川 「ほら、思ってるでしょ? あれ」


藤村 「だからなに?」


吉川 「なにって……あれだよ」


藤村 「あぁ、あれね」


吉川 「そうそう。あれ」


藤村 「ふぅ~ん」


吉川 「……」


藤村 「なるほどねぇ」


吉川 「あれってなんだよ!」


藤村 「あれはあれだろ?」


吉川 「あれじゃわからねーよ! なんだよさっきから、バカか」


藤村 「自分から言い出したんじゃん」


吉川 「俺のは違うんだよ。俺のあれはちゃんと考えてあったもん」


藤村 「俺のもだよ」


吉川 「だからあれって何だよ!」


藤村 「お前が言ってるあれだよ」


吉川 「俺のあれなんてないよ!」


藤村 「ないんだ……」


吉川 「あ……」


藤村 「まぁ、そんなことだと思った」


吉川 「いや、違うよ。最初はあったの」


藤村 「へぇ……」


吉川 「まぁ、あれだ。あんまり気にしないで」


藤村 「そうだな。あんまりあれしてもあれだしな」


吉川 「なんだよあれって!」



暗転

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