本当は怖い

吉川 「本当は怖いグリム童話ってあるじゃん?」


藤村 「あるね」


吉川 「あれ、俺もあるの!」


藤村 「あるって意味がよくわからないんだけど」


吉川 「聞いて聞いて! 本当は怖い、俺の先輩の自慢話」


藤村 「うわぁ。めちゃくちゃ聞きたくないな。それは」


吉川 「超怖いぜ」


藤村 「いや、怖さの部分で聞きたくないわけじゃないから」


吉川 「俺の先輩ね、超強いの」


藤村 「わぁ、出た出た。やっぱそういうのか」


吉川 「まじで敵なし」


藤村 「どうせ学校しめてたとか、何人倒したとかでしょ?」


吉川 「いや、ちっちゃいカメハメ波だしてた」


藤村 「でちゃったの!? 波が!」


吉川 「怖いだろ?」


藤村 「怖いというか、そういう嘘を恥ずかしげもなく言える姿勢がちょっと怖い」


吉川 「あとね、俺の先輩、超オシャレ」


藤村 「へぇ、そうなんだ」


吉川 「オシャレ泥棒で逮捕歴あるからね」


藤村 「またそんなのか」


吉川 「しかも、そのあとオシャレ脱獄」


藤村 「逃げちゃったんだ」


吉川 「オシャレ前科者だよ」


藤村 「それは結局、ただの犯罪者だな」


吉川 「あと、俺の先輩、超大食い」


藤村 「なんかパンチの弱い自慢を押し出してきたなぁ」


吉川 「駅前のカレー屋の大食い記録持ってる」


藤村 「へぇ。としか言いようがない」


吉川 「カレー8億杯」


藤村 「多い! 先輩よりもカレー屋がすごいよ」


吉川 「インドと貿易問題が起きるくらい食べたらしいよ」


藤村 「そりゃ、インドの経済も動くわ」


吉川 「あとね、俺の先輩、超力持ち」


藤村 「どんどん自慢が地味になってくる」


吉川 「ブルドーザー持ち上げたからね」


藤村 「うそつけ」


吉川 「箸で」


藤村 「箸で!? ちょいとつまんで? それは箸がすごいよ。何製だよ」


吉川 「もう、箸でつまんで右の皿から左の皿へ、一粒二粒……」


藤村 「小豆じゃん。ちょっと器用な箸使いの練習じゃん」


吉川 「それをブルでやってたからね」


藤村 「すごい。箸が」


吉川 「まぁ、そんな感じで本当は怖いんだよ。俺の先輩の自慢は」


藤村 「ある意味、怖いといえば怖いけど」


吉川 「でもね、一番怖いのは……そんな先輩、いないんだよ! キャー!」


藤村 「あ、うん。知ってた」



暗転

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